寝ても覚めても学校のこと。~学校経営の経営課題(人事・財務・募集・施設などなど)について考えるブログ~

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給付型奨学金制度の設計について

今週初めのブログでもお伝えしましたが、昨今「子どもの貧困」が社会問題となっています。

幸いなことに、私学ではそのようなケースは公立校に比べると少ないとは思います。

ただ、子どもたちに教育を受ける権利があり、それを本当の意味で保証するためには、大人がその権利を享受できるよう環境を整えていくことが最低限求められるように思います。

 

一方、各私学においては自校の特色化をはかり、結果としてより多くの志願者に恵まれるように世間に働きかけを行う必要があります。

進路開拓、特に進学実績は各家庭が学校選びを行う際の大きな基準になっているのが現状、事実であり、それを踏まえた施策の展開も検討を余儀なくされている状況であると言えるでしょう。

その一手段として、特待生制度をはじめとする奨学金制度を導入する私学も決して少なくないように思います。

 

というわけで、本日のブログでは今後設置が予定されている奨学金制度について、その内容をご紹介します。

文部科学省HPより。

 

給付型奨学金制度の設計について<議論のまとめ>:文部科学省

 

文部科学省 給付型奨学金制度検討チーム」が2016年12月19日に公表した内容です。

以下、概要を転載させていただきます。

(太字は筆者が付しています。ご容赦ください)

 

(制度趣旨)
経済的理由により進学を断念せざるを得ない者の進学を後押しする制度
○進学に向けた学生の努力を促す仕組みとなる制度

(対象学校種)
○大学、短期大学、高等専門学校、専門学校

(家計基準)
住民税非課税世帯

(学力・資質基準)
○全体を高校等からの学校推薦とし、成績基準の目安等をガイドライン(*)で示しつつ、各学校が定める基準に基づき推薦
*以下のいずれかの要件を満たす者から推薦
①十分に満足できる高い学習成績を収めている者
②教科以外の学校活動等で大変優れた成果を収め、教科の学習で概ね満足できる学習成績を収めている者
※進学の意欲・目的等に関するレポート等を評価
※高校生活全体の中で課題克服の経験などにも着目
※社会的養護を必要とする学生等への配慮

(学校推薦枠の割り振り方法)
○一人別枠方式:各学校に1人を割り振った上で、残りの枠数を各学校の非課税世帯の奨学金貸与者数を基に配分

(給付額)
○国公立自宅:2万円、国公立自宅外・私立自宅:3万円、私立自宅外:4万円
※国立大学は授業料減免制度を踏まえ、給付額を調整
○社会的養護を必要とする学生には入学金相当額を入学時に追加給付

(給付規模)
○経済的に困難な状況にある子供たちの進学を後押しするとの政策目的を実現するために十分な規模

(給付方法)
○毎年度学業の状況等を確認することを前提とした上で給付(適格認定制度により学業状況等を確認)

(給付開始時期)
平成30年度進学者から本格実施
○特に経済的に厳しい状況にある学生を対象として平成29年度から一部先行実施
※平成29年度先行実施は、私立・自宅外生(ガイドライン①該当者)、社会的養護を必要とする者(②該当者)を対象

(入学時納付金への対応)
日本学生支援機構の入学時特別増額貸与に加え、厚生労働省の生活福祉資金等の無利子貸付金について連携して制度の周知を図り、利用を促進

(制度の周知)
奨学金制度全体について、ファイナンシャルプランナー等と連携し、生徒・保護者・教員等に周知を図る「スカラシップアドバイザー事業(仮称)」を実施

(その他)
無利子奨学金拡充新所得連動返還型制度の導入有利子奨学金の利率下限見直しなど、奨学金制度全体の制度改善を実施
○当面は本制度設計により制度を運用し、施策効果を検証するとともに、運用状況に応じて見直し
学生の地方定着促進のために各自治体が行う返還支援制度の充実や各大学・民間団体が行う給付型奨学金の充実、卒業生のネットワーク化による寄付等社会還元の促進

 

上記記事は、公的かつ高等教育機関を対象としている奨学金制度ですので、各私学の現在の施策には適合しないかもしれません。

しかも、経済面とともに学力面の要件が存在するため、本制度に該当するケースがどれほどあるのかも不透明です。

ただ、今後の人口減、少子化は私学マーケットの縮小につながる危険性が高く、その中では経済的に決して余裕があるわけではないご家庭が私学へ進学するケースがこれまで以上に多くなるかもしれません。

冒頭で述べたように、子どもたちが教育を受ける権利を全うするためにも、学校がどのような環境整備ができるのか、あるいはすべきなのか、本制度を通じて考えてみてはいかがでしょうか。

 

(文責:吉田)

 

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