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寝ても覚めても学校のこと。~学校経営の経営課題(人事・財務・募集・施設などなど)について考えるブログ~

大阪の学校経営コンサル会社/株式会社ワイズコンサルティングが、学校経営に関する情報を収集し発信するブログです。

日本私立学校振興・共済事業団にかかる管理積立金の管理及び運用の状況についての評価の結果

本日のブログ、題名が長くてすみません。

文部科学省HPからの情報なのですが、内容はいわゆる私学事業団の資産運用結果の報告です。

 

日本私立学校振興・共済事業団にかかる管理積立金の管理及び運用の状況についての評価の結果:文部科学省

 

自校教職員の退職金を含め、その資産の状況が気になっておられる私学関係者はきっと少なくないと思います。

一方で、上記リンク先を開いて、レポートにアクセスしたものの、中身まで読む気になれず断念?されたかたもいらっしゃるかと(とにかく読みにくいレポート、というのが私の感想です)。

そこで、私なりのまとめではありますが、皆さんにもお届けしようとブログをしたためる次第です。

 

まずは、このレポート自体のまとめをみておきましょう。

全68ページのこのレポートの57ページめに記載されています。

サマリーなら最初に付けてもらえると分かりやすいのですが…

(わざと分かりにくい場所に書いている可能性も?ひねくれものの考え方でしょうか)

【まとめ】
年金一元化実施初年度となる27年度下半期の運用状況は、円高の進行やマイナス金利の導入といった市場環境を背景として、修正総合収益率がマイナス0.79%となり、実質的な運用利回りについても、財政計算上の前提を0.74%下回ることとなったが、長期的な観点に基づく運用計画である基本ポートフォリオが策定され、これに準拠した運用が行われていることから、現時点で制度運営上の影響を懸念する状況ではないと思料される。
なお、共済独自資産の運用においては、目的に沿った運用が行われ、プラスの収益を確保している。
また、積立金基本指針及び管理運用の方針の遵守状況については、おおむね遵守されていることを確認した。

要するに、運用上の問題はない、との結論を出していますね。

 

ただし、この中にちょっと気になる記述があります。

「修正総合収益率がマイナス」…どういう意味でしょうか。

この数字の根拠が別の箇所に記載されていますので、抜粋してみます。

2 私学事業団の管理積立金の運用状況が年金財政に与える影響

私学事業団の平成27年度下半期の管理積立金の収益率(名目運用利回り)は△0.79%、実質的な運用利回りは△0.95%である。平成26年財政検証の前提における平成27年度下半期の実質的な運用利回りは△0.30%としており、実績が財政検証の前提を0.65%下回ったが、長期の経済前提において必要とされる積立金の実質的な運用利回り(1.7%)を最低限のリスクで確保するために、長期的な観点から策定した基本ポートフォリオに準拠した運用が行われており、現時点で年金財政への影響が懸念されるものではないと思料する。

ご理解いただけますでしょうか。やっぱり分かりにくいですね。

順を追って考えてみましょう。

 

私学事業団の管理積立金の使途は「退職金」「年金」ですね。 

そして、退職金や年金は勤務時の単価=「月給」に連動して上がったり下がったりしますよね。

とすると、私学事業団のお金は、月給の上昇率と同じかそれ以上の率で運用しないと、退職金等の支払時に「原資不足」になってしまう危険性が高まります。

 

つまり、「運用利回り>賃金上昇率」という状態で運用することが求められるわけです。

上記記載で「修正総合収益率」とあるのは「運用利回り-賃金上昇率」を示しているので、このことからすると、修正総合収益率は少なくとも「ゼロ以上」でないと、減資は目減りしてしまうわけです。

 

ところが、平成27年度下半期はそれがマイナス0.95%だった、とのこと。

ちなみに目標値(「前提」と表現されていますが)はマイナス0.30%だったそうなので、それをも下回っています。

 

「0.95と0.30ならそんなに差はないから問題ないんじゃないの?」

というのが、冒頭の「まとめ」の主旨だと私は感じたのですが、実は数字を分解するともう少し怖い状況であることが分かります。

 

先ほどお伝えした通り、この「マイナス0.95%」という数字は、「運用利回り-賃金上昇率」で算出されたものです。

では運用利回りと賃金上昇率を別個で見たらどうなるか、と言いますと…

運用利回り=マイナス0.79%(目標値(前提)はプラス0.94%)

賃金上昇率=プラス0.16%(目標値(前提)はプラス1.24%)

となっています。

つまり、プラスで運用すべき資産がマイナスで運用されてしまった、しかもその差は1.73%もあります。

ただし、賃金は思ったほど伸びなかったので、マイナスになった運用利回りの一部を補ってくれた、ということです。 

 

私学事業団の財政、本当に問題ないのでしょうか…

こうやって見てくると、ちょっと不安になってしまいます。

 

退職金や年金というのは、「将来」の教職員の生活保障にあたるものです。

仮に目の前ではそれほど大きな問題はなくても、それが少しずつ顕在化し、気づいたときにはどうしようもなくなっていることもあるものです。1人当たりの金額も決して小さくはありません。

レポートの内容は難解で読みにくいですが、個人的にはこの私学事業団の財政は私学の経営に大きな影響を及ぼす危険性があるものとして注視すべきと感じています。

私学の皆様も、くれぐれもお気を付けくださいね。

 

(文責:吉田)

 

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