寝ても覚めても学校のこと。~学校経営の経営課題(人事・財務・募集・施設などなど)について考えるブログ~

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大学における教育内容等の改革状況について

最近、大学をめぐるいろいろな動きがニュースになっています。

大学の動きは、近い将来の中高の動きにつながりますので、ぜひチェックしておきましょう。

今日は教育改革の状況についての統計です。

文科省HPより。

 

大学における教育内容等の改革状況について(平成26年度):文部科学省

 

まずはこの調査の目的から。

大学における教育内容・方法の改善等の実施状況について定期的な調査を実施し、国民への情報提供に努め、各大学のより積極的な教育内容等の改善に関する取組を促す。

なるほど、情報提供だけではなく「各大学のお尻をたたく」ことも目的になっているんですね。ある意味、正直というか。

ちなみに今回の調査では全国の国公私立すべてが対象とされていて(短大は除かれています)、回答率は実に99%(764大学が回答)となっています。

 

さて調査結果です。かいつまんで見ていきましょう。

まずは、<特に進展が見られた事項の例>です。

(1)継続的な進展が見られた事項

・初年次教育において、論理的思考や問題発見・解決能力の向上のためのプログラムを実施している大学数

… 平成21年度:314大学(43%)→ 平成26年度:466大学(63%)

・初年次教育において、将来の職業生活や進路選択に対する動機付け・方向付けのためのプログラムを実施している大学数

… 平成21年度:379大学(52%)→ 平成26年度:550大学(74%)

・学部段階において、GPA制度を導入している大学数

… 平成21年度:360大学(49%)→ 平成26年度:578大学(78%)

・学部段階において、学生の学修時間や学修行動の把握の取組を行っている大学数

… 平成23年度:269大学(37%)→ 平成26年度:565大学(77%)

教育改善に関するPDCAサイクルの確立に取り組んでいる大学数

… 平成23年度:228大学(30%)→ 平成26年度:491大学(64%)

(2)近年進展が見られた事項

履修系統図(カリキュラムマップ、カリキュラムチャート)を活用している大学数

… 平成23年度:299大学(40%)→ 平成26年度:426大学(58%)

シラバスに、準備学修に必要な学修時間の目安を記載する大学数

… 平成21年度:50大学(7%)→ 平成26年度:121大学(16%)

・全学的なIR(インスティトゥーショナル・リサーチ=大学の組織や教育研究等に関する情報を収集・分析することで、学内の意思決定や改善活動の支援や、外部に対する説明責任を果たす活動)を専門で担当する部署を設置する大学数

… 平成24年度:81大学(11%)→ 平成26年度:150大学(20%) 

コメントは後ほど。

 

続いて、<今後の課題と考えられる事項の例>です。

こちらは文章形式で少し長くなってしまいますが、あえてそのまま転載します。

1.三つの方針に基づいた大学教育の質の向上のための各種取組

大学において育成すべき力を学生が確実に身に付けるためには、三つの方針(卒業認定・学位授与の方針、教育課程編成・実施の方針、入学者受入れの方針)に基づいて個々の授業科目等を越えた大学教育全体としてのカリキュラム・マネジメントを確立し、教育課程の体系化・構造化を行い、学生等へわかりやすく示すこと、各種データに基づいたIRによって教学マネジメントのPDCAサイクルを確立することが重要である。

この点について、学部段階において、卒業認定・学位授与の方針(ディプロマ・ポリシー)は約98%、教育課程編成・実施の方針(カリキュラム・ポリシー)は約98%、入学者受入れの方針(アドミッション・ポリシー)は約100%と、ほとんどの大学で定められているが、次のような課題がある。たとえば、学生へ各大学の教育内容をわかりやすく示す方策としてはカリキュラムマップ、カリキュラムチャート等の履修系統図の活用やシラバスの充実(例えば、シラバスに準備学修に必要な学修時間の目安に関する記載を行うこと、シラバスに課題に対するフィードバックに関する記載を行うこと)が有効であると考えられるが、履修系統図を活用している大学が58%、シラバスの充実に関する記載を行っている大学の割合は、学修時間の目安の記載が16%、課題に対するフィードバックが13%と、近年進展を示しているものの依然として低い割合にとどまっている
また、IRについては、全学的なIRを専門で担当する部署を設置する大学数が平成24年と比較して増加しているが(11%から20%に増加)、まだ取組が全体的な広まりを見せているとは言えず、今後、先進的な取組事例も参考に、各大学において取組が進展することが期待される。

2.教職員の資質向上

大学教育の質の向上のためには、教員の職能開発(FD)が重要であり、大学設置基準において、各大学における実施が定められている。この点について、教員のFDへの参加率は依然として低い状況(教員全員が参加した大学は約11%、4分の3以上の教員が参加した大学は約39%)となっている。また、「教員相互の授業参観」は約54%、「アクティブ・ラーニングを推進するためのワークショップまたは授業検討会」は約34%の大学で実施するにとどまっている。
さらに、学長のリーダーシップの下で戦略的に大学を運営できるガバナンス体制を構築するために、大学経営の感覚を身に付けた教職員の育成が求められるが、この点について、教職員を対象に、マネジメント能力の向上を目的とするSDを実施する大学は約35%、戦略的な企画能力の向上を目的としたSDを実施する大学は約26%にとどまっている。

いかがでしょうか。

学校ではいわゆる「PDCA」がまだまだ発展途上であることがお分かりいただけると思います。

計画や目標を立てて、それを目指した取組を実践し、その実践をふりかえり評価したうえでさらに改善を目指す。

物事が上達するしくみはこれしかない、とも思うのですが…

 

学校現場はどうしても「前年をなぞる」活動がほとんどを占めてしまいます。

もちろん、同じことをやり続けることもまた、学校において必要なことではあります。

ただ、目の前にいる学生や生徒が昨年と全く同じわけではないのに、活動が全く同じなのは子どもたちに対して誠実な態度とは言えないような気もします。

変えるべきでないものと変えるべきものを峻別し、変えるべきことを変える勇気と行動力を携えたいところです。

 

そんな辛口コメントをした直後に言いにくいのですが、先ほどの調査結果を見ると、大学の取組はある程度進展はしているようです。

文科省の枠組にはまることがいいことだとは思いませんが、先ほど申し上げた通り、改善活動を継続し、常によりよさを求めることはどんな場においても大切なことです。

各私学においては、国の掛け声などなくても、自ら改善活動を進める意欲と元気さを持ち合わせていただきたいと願っております。

 

(文責:吉田)