労働契約法による有期雇用者の無期転換が実質的なスタートを切るタイミングが迫ってきましたね。
各校でお話を聞く中でも、その対応に苦慮されているケースも。
これまでの私学における教職員の雇用形態が変化を余儀なくされている様子が見て取れます。
その中で検討すべきことのひとつが高年齢者の雇用。
いわゆる「定年後」の雇用をどう考えるか、ということが上記論点のひとつの解決策になることもあり得るでしょう。
というわけで、本日は高年齢者の雇用状況に関する調査結果をご紹介します。
私学に限った調査ではありませんのでご容赦ください。
厚生労働省HPより。
平成28年「高年齢者の雇用状況」集計結果 |報道発表資料|厚生労働省
まずは高年齢者の雇用に関する、政策的大原則をおさらいしておきましょう。
上記ページの記載内容を転載いたします。
高年齢者が年齢にかかわりなく働き続けることができる生涯現役社会の実現に向け、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」では65 歳までの安定した雇用を確保するため、企業に「定年制の廃止」や「定年の引上げ」、「継続雇用制度の導入」のいずれかの措置(高年齢者雇用確保措置)を講じるよう義務付け、毎年6月1日現在の高年齢者の雇用状況の報告を求めています。
ここで記載のある「毎年6月1日現在」の状況報告を集計した最新の結果がこのたび発表された、というわけです。
集計対象は、全国の常時雇用する労働者が31 人以上の企業153,023社。
規模別にみると、31~50 人規模が52,470社、51~300人規模が84,743社、301人以上が15,810社となっています。
集計結果の主なポイントを見ておきましょう。
1 定年制の廃止および65歳以上定年企業
計28,541社(対前年差1,472社増加)、割合は18.7%(同0.5ポイント増加)
【定年制の廃止企業】
・中小企業:3,982社(同137社増)、2.9%(同変動なし)
・大企業:82社(同17社増)、0.5%(同0.1ポイント増)
【65歳以上定年企業】
・中小企業:23,187社(同1,192社増)、16.9%(同0.4ポイント増)
・大企業:1,290社(同126社増)、8.2%(同0.7ポイント増)
・65歳定年企業:22,764社(同1,181社増)、14.9%(0.4ポイント増)
・66歳以上定年企業:1,713社(同137社増)、1.1%(同変動なし)
定年を廃止したというケースは少ないようですが、65歳定年制は少しずつ増えてきているようですね。
2 希望者全員66歳以上の継続雇用制度を導入している企業
7,444社(同685社増)、割合は4.9%(同0.4ポイント増)
・中小企業:7,147社(同633社増)、5.2%(同0.3ポイント増)
・大企業:297社(同52社増)、1.9%(同0.3ポイント増)
希望者全員、というのは経営上なかなか難しそうですね。
3 70歳以上まで働ける企業
32,478社(同2,527社増)、割合は21.2%(同1.1ポイント増)
・中小企業では30,275社(同2,281社増)、22.1%(同1.1ポイント増)
・大企業では2,203社(同246社増)、13.9%(同1.2ポイント増)
ご年配の方でも若者より元気なのでは?と思うこともよくあります。
そんな事情もあるからか、70歳まで働くことができる企業は結構増えているようですね。
人材の確保はどの私学においても非常に重い課題になってきたように思います。
人口減を筆頭に、教員志願者そのものの頭打ち、業界不問の職業人不足…
外部環境に起因する人手不足は今さら指摘するまでもないでしょう。
ただ、それで手をこまねいていては経営が行き詰まってしまいます。
本記事にある高齢者についての考察、さらには組織の人員配置や機関設計、あるいは人事制度や育成システムの構築など、工夫の余地は山ほどあります。
外部環境が厳しい時のほうが、むしろいろいろなことを思いつくもの。
ぜひこの機会に考察を深めていただければと思います。
(文責:吉田)