私立学校には当然「生え抜き」の教職員さんもいらっしゃれば、「移籍組」の方もいらっしゃるでしょう。
私はなぜか後者にあたる方とのお付き合いが多いような気がします。
移籍と一言でいっても、どこから移って来られたかは人それぞれ。
公立校から、公務員から、そして一般企業から…
そして、どこから移って来られても、移籍組の皆さんは各私学の「風土」になかなかなじめない、あるいは反発を感じられる方も多いように思います。
さて学校で話をお聞きしていると、「企業アレルギー」とも言うべき体質があることを感じます。
企業ではこういうことが始まっていて、とか、企業では以前からこういうことをやっていて、というような発言に対して、入口でシャットダウンしてしまってその内容については聞く耳すら持たない、という教職員さんは確かに多くいらっしゃいます。
一方で、企業ではこんなの当たり前だから、という調子で学校にも同じことを求める方もいらっしゃいます。
学校だって企業と同じ事業体であり、組織なのだから、企業のようにスピーディーに物事を決め、実行に移すべきだ、といった考え方です。
私は職歴からすればちょうどその中間を歩んできたのかもしれません。
だからなのか、両者の言い分にそれぞれ共感もし、同時に違和感も持っています。
学校の特殊性は確かにあります。
それは「学び」という、一生終わることのない活動の場を提供する場として、短期的には結論を出しにくい、あるいは結論を出してはならない事業体であることは確かでしょう。
そして、そのような性質上、物事の決め方や進め方がトップダウンあるいはヒエラルキーに沿う形ではなされないことにもまた、一定程度必要性があると私は感じます。
ですから、仮にPDCAサイクルを回すと言っても、すべての目標を定量的に数値化し、その数値の達成度で当該年度の施策の進捗度を測ることは適切ではないでしょう。
企業経営を経験してこられた方にとってはまだるっこしいと思うこともあるかもしれませんが、人の育ちというのは物差しで測れるほど単純ではありません。
ただ、だからといって企業経営から学ぶところがないかと言えば、そうは言えません。
それどころか、企業経営の手法や考え方には優れたものが数多くありますから、むしろどんどん学ぶべきです。
先ほど触れた数値目標についても、仮にそれができないのであれば、他の方法で何とかできないか、という工夫があっていいと思います。
最近問題になっている労務管理、残業抑止なども、民間企業での取組はおそらく大きなヒントをもたらしてくれるものと思います。
そう考えると、学校だから、企業だから、と声高に主張することにそれほど大きな意味はないような気がします。
自分たちがよりよく活動するために、子どもたちのより良い未来のために、という「目的」にこだわり、「手段」「方法」へのこだわりを捨てることこそ、学校の管理職や教職員に求められる感覚なのではないでしょうか。
学校は経験としてやってこなかったことをやろうとしたときの拒否反応が大きいように感じるのですが、それは子どもたちを育てる場としては決して望ましいことではありません。
何事もチャレンジしてみるという気持ちを、学校の新たな風土にしていただきたいと願っています。
というわけで、「風土」をテーマにしたセミナーが今週金曜日に開催されます。
職場の雰囲気は学校風土に支配されていることが多いもの。
風土を知り、望ましい風土に変えていくことは経営の最重要課題です。
一方で、私学を対象にしたこのテーマのセミナーはなかなかないと思います。
ぜひともこの機会にご参加ください。
(文責:吉田)