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平成28年人事院勧告

本日は、本年度の人事院勧告の内容をご紹介しましょう。

人事院HPより。

平成28年人事院勧告

 

恥ずかしながら、私自身、人事院勧告をしっかり読むのは今回が初めてです。

国家公務員としての勤務経験もあるのに…まったく意識しておりませんでした。

現在の仕事を始めてからは、各校の給与制度の中に少なからず人事院勧告を意識した内容が含まれていることを知りましたので、むしろ公務員を離れてから人事院勧告が身近な存在になった次第です。

とはいえ、その内容を詳しく読むことはなく、ニュースで流れる概要程度をふむふむと聞いていたくらいです。

今回、人事院HPでいろんな資料を拝見し、非常に勉強になりました。

 

さて本題。

資料はいくつもありますし、本体を読み始めるとそれなりにボリュームがありますので、ひとつかみできる資料として「人事院総裁談話」をお勧めします。

これはあっという間に読めますし、改定のポイントが端的にまとまっています。

 

さすがにこれでは情報量が少ない、という方のために、以下では「給与勧告の骨子」資料をまとめつつ、内容を確認しておきたいと思います。

まずはポイントのまとめです。

○ 本年の給与勧告のポイント=月例給、ボーナスともに引上げ

① 民間給与との較差(0.17%)を埋めるため、俸給表の水準を引き上げるとともに、給与制度の総合的見直しにおける本府省業務調整手当の手当額を引上げ
② ボーナスを引上げ(0.1月分)、民間の支給状況等を踏まえ勤勉手当に配分

○給与制度の改正

① 給与制度の総合的見直しについて、本府省業務調整手当の手当額を引上げ
配偶者に係る扶養手当の手当額を他の扶養親族と同額とし、子に係る手当額を引上げ
③ 専門スタッフ職俸給表に4級を新設

続いて、上記ポイントの内容について。 

○給与改定の内容と考え方

<月例給>
(1) 俸給表
① 行政職俸給表(一)
民間の初任給との間に差があること等を踏まえ、総合職試験、一般職試験(大卒程度)及び一般職試験(高卒者)採用職員の初任給を1,500円引上げ若年層についても同程度の改定
その他は、それぞれ400円の引上げを基本に改定(平均改定率 0.2%
② その他の俸給表
行政職俸給表(一)との均衡を基本に改定(指定職俸給表は改定なし)
(2) 本府省業務調整手当
給与制度の総合的見直しを円滑に進める観点から、手当額を引上げ
(係長級:4%→4.5%相当額、係員級:2%→2.5%相当額)
(3) 初任給調整手当
医療職俸給表(一)の改定状況を勘案し、医師の処遇を確保する観点から、所要の改定

<ボーナス>
民間の支給割合に見合うよう引上げ 4.20月分→4.30月分
民間の支給状況等を踏まえ、勤務実績に応じた給与を推進するため、引上げ分を勤勉手当に配分

[実施時期]
・月例給:平成28年4月1日 ・ボーナス:法律の公布日

○給与制度の改正等

1 給与制度の総合的見直し
・ 国家公務員給与における諸課題に対応するため、平成26年の勧告時において、地域間の給与配分、世代間の給与配分及び職務や勤務実績に応じた給与配分の見直しを行うこととし、昨年4月から3年間で、俸給表や諸手当の在り方を含めた給与制度の総合的見直しを実施
・ 平成29年度は、本府省業務調整手当の手当額について、係長級は基準となる俸給月額の5.5%相当額に、係員級は同3.5%相当額にそれぞれ引上げ
2 配偶者に係る扶養手当の見直し(平成29年4月1日から段階実施)
民間企業及び公務における配偶者に係る手当をめぐる状況の変化等を踏まえ、以下のとおり見直し
・ 配偶者に係る手当額を他の扶養親族に係る手当額と同額まで減額。それにより生ずる原資を用いて子に係る手当額を引上げ(配偶者及び父母等:6,500円、子:10,000円)
・ 本府省課長級(行(一)9・10級相当)の職員には、子以外の扶養親族に係る手当を支給しない。
本府省室長級(行(一)8級相当)の職員には、子以外の扶養親族に係る手当を3,500円支給
・ 配偶者に係る手当額の減額は、受給者への影響をできるだけ少なくする観点から段階的に実施し、それにより生ずる原資の範囲内で子に係る手当額を引上げ
税制及び社会保障制度の見直しの状況や民間企業における配偶者に係る手当の見直しの状況に応じ、国家公務員の配偶者に係る扶養手当について、必要な見直しを検討
3 専門スタッフ職俸給表4級の新設(平成29年4月1日実施)
政府において、部局横断的な重要政策等の企画及び立案等を支援する職を、現行の専門スタッフ職よりも上位の職制上の段階に相当する新たな専門スタッフ職として、平成29年度から各府省の官房等に設置予定。この新たな職の専門性、重要度、困難度を踏まえ、専門スタッフ職俸給表4級を新設
・ 俸給月額は、同表3級の最高号俸の俸給月額を一定程度上回るものとする一方、管理的業務を行うものではないことを踏まえ、指定職俸給表1号俸の俸給月額を下回る水準に設定
昇給は、勤務成績が極めて良好である場合に限定(昇給号俸数は1号俸)。勤勉手当は、他の俸給表と比べ、勤務実績をより反映し得るよう、専門スタッフ職俸給表3級と同一の成績率を設定

さらにその他の点についても以下の通りコメントされています。

○その他
(1) 再任用職員の給与
・ 勤勉手当について、勤務実績を支給額により反映し得るよう、「優秀」の成績率を「良好」の成績率よりも一定程度高くなるように設定
・ 再任用職員の増加や在職期間の長期化等を注視しつつ、民間企業の再雇用者の給与の動向や各府省における再任用制度の運用状況等を踏まえ、引き続き、給与の在り方について必要な検討
(2) 介護時間制度の新設に伴う給与の取扱い
介護時間を承認され勤務しなかった時間がある場合であっても、昇給・勤勉手当において直ちに不利にならない取扱いとなるようにし、あわせて、介護休暇・育児休業等についても同様の取扱い
(3) 非常勤職員の給与
平成20年に発出した指針の内容に沿った処遇の確保が図られるよう、今後とも各府省を指導

太字は私自身が気になった点に付しています。ご参考まで。

各私学の給与体系自体が公務員に準じる形を採っているケースもたまに目にしますが、仮にそうでなくても、時代背景を給与制度に取り込むという観点で上記視点は参考になるところも多くあるように思います。

ざっとご一読ください。

 

さて基本に立ち返るのですが、この人事院勧告、公務員給与の水準を「民間給与」の水準と比較し、検討を行うことで当該年度の処遇について勧告する形を採っています。

 

 でも、「民間給与」って公務員並みだったっけ…?

 

と思われる方、いらっしゃいませんか?

 

私はちょっと気になったのでその点を調べてみたところ、比較対照とされている民間給与は、従業員規模50名以上の企業のもの。

もっと言うなら、その母数の8割以上は従業員規模100名以上であり、500名以上に絞っても全体の4割を占めます。

小規模あるいは零細企業はそもそも比較対象に含まれないんですね。

ですので、ご自身の肌感覚よりはやや高めに感じられる方もいらっしゃるかもしれません。

 

このように、「比較対象」が果たして適切かどうか、という点は制度構築の際には特に留意すべきです。

今回の直接の話とはずれますが、比較するということの有用性と留意点についても今一度意識しておきたいところです。

 

(文責:吉田)