先日、ある学校の事務長さんとの会話の中で、「インチ・アヘッド」という言葉を伺いました。
聞けば、ある情報誌に掲載されていた言葉だそうで、その引用元も教えていただきました。
そこにはこんなことが書かれています。
『他より少し前に出る、という意味』
『ビジネスの(中略)大部分の核心は「インチ・アヘッド」であり、その積み重ねが重要なのだ』
インターネットで調べてみると別の意味もありそうなのですが、事務長さんとのお話の中では、学内改革を進める際の心構えとしてこの言葉を常に心に留め置いている、との趣旨でこの言葉を用いられていました。
物事は劇的には進まない。だからといって、何もしなければ何も変わらない。
そこで、ちょっとずつ前進する。
同様の意味を持つ言葉として、その事務長さんは一歩にも至らぬ前進、すなわち「半歩」という言葉も紹介してくださいました。
私も、各校に関わる中で、同様のことをよく感じます。
これまで長年にわたって続けてきたことを変えるというのは至難の業。
でも、変える必要性は理解している。
そんなとき、どうやって「現実の変化」を成就していくのかと言えば、劇的な変化を狙うよりもむしろ、「半歩前進」を繰り返すことが王道である、と思います。
事業体、特に学校という場は人の集合体です。
組織を構成する人たちが時間をかけて培ってきた歴史や風土を無視して改革を進めることは、形こそ理想に近づいているかもしれませんが、組織自体を壊してしまう危険性があります。
私自身、大切なのは組織自身の維持発展である、というスタンスですので、理想像が明確であっても、そこに至る過程は慎重であるべき、と考えています。
先日お話した事務長さんもまさにそのことをおっしゃっていたのでしょう、理想像に近づこうとするあまり、現在いい状態である別の要素を崩してしまう懸念についてとても気にされていました。
半歩前進、その意味を改めて深く考えさせられました。
ただその一方で、数年の取組によっても、半歩前進どころか、全く進まない、あるいはむしろ後退してしまう、ということも起こるのが組織の現実です。
場合によっては、理想像に一気に近づいて、そこから次のアクションを展開することもまた、否定してはならないとも思います。
事実、私はいろいろなかかわりの中で、「一足飛び」を全くしないかと言えば、決して多くはありませんがそのような変革を試みることもあります。
ゴルフにおいては、途中にある池を一気に超えるルートを選ぶか、手前で刻んで手堅く進めるか、それは当日の気象条件や自らのコンディション、さらには目標スコア等と絡みながら判断がなされます。
それと同様、組織の風土や構成員の状態、さらに目指すべき目的が組織に与えるインパクト等によって、むしろ池越えルートを選ぶべき場面も確かにある、と私は思います。
そして、池を越えた後にたどり着いた地点から見る景色は、越える前とは全く違うことも多くあります。
「そんなに心配しなくても、このくらいの池なら十分越えられたなあ」
という、杞憂に近い想いをふりかえることもしばしば。
目標に対するアプローチにはいろんな方法があることを思い知らされます。
スタートから積み上げていく=半歩前進という考え方も重要。
一方で、理想像から逆算する、という考え方もまた重要な気がします。
いずれにせよ、理想が何なのかは明確に持つ必要がありますよね。
御校の理想像はどこにありますか?
そしてそこに向かう方法は…?
それを明示するための「事業計画」の作り方について、本日セミナーを開催予定です。
今、私の頭の中はそのことでいっぱいです(笑)