寝ても覚めても学校のこと。~学校経営の経営課題(人事・財務・募集・施設などなど)について考えるブログ~

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保育士の給与はなぜ低いのか

本日は少し前に気になったこんなニュースをご紹介します。

 

保育士の給与はなぜ低いのか 待機児童問題から考える:朝日新聞デジタル

 

まず、保育士の現状について、記事に記載されている内容をまとめておきましょう。

○保育士不足

・政府が1月に打ち出した『保育士確保プラン』では、2017年度末までに新たに6.9万人の保育士確保が必要

・一方で、保育士の資格があっても保育士の仕事に就かない人も多数存在

○賃金

・保育士の平均賃金:207,400円/月(公立・私立含む)

・全産業の平均賃金:295,700円/月

・幼稚園教員:219,600円/月

・小学校教員:331,600円/月

○保育士の仕事

「アレルギーの子どもの対応を誤れば生命にかかわりますし、発達の遅れなど特別な配慮が必要な子どももいます」

「子どもや家庭の状況が様々ななか、保護者への対応もあります」

「午前7時台に始まり、午後8時以降もあいている保育園も増え、早朝や夜間、土曜日の勤務も増えています」

「子どもの人数によって配置する保育士の人数が決まっているため、休みにくいこともあります」

○保育士に対する社会的評価

「『子どもと遊ぶだけで、特別な知識もいらない』と認識している人がいるなど、社会的評価が必ずしも高くありません」

カギカッコ書きは記事からそのまま引用したものです)

 

そして、記事の表題でもある「保育士の給与はなぜ低いのか」という問い。

その答えを、興味津々で探したのですが、この記事には明確な理由が書かれているようでちょっと読み取りにくい印象。

記事の内容を踏まえ、勝手に以下の3点にその理由をまとめてみました。

 

・教育職でなく、福祉職であること

「保育士を教育の職員としてみている国では学校教員との給与格差はありませんが、日本は福祉職なので、格差が大きいと言えます」

・収入を勝手に増やせないという制度的な要因

認可保育所の場合、財源は基本的に公的な補助金と、親が払う保育料です。その保育料は公定価格で決まっているので、事業者側が勝手に定めることができません。基本的に、補助金か保育料を上げないと保育士の給料は上がりません」

・昇給システムの未整備

「保育士は長く勤めても昇給しにくいシステムです。日本の保育士資格にはスキルに応じた資格の区分がありません。仮にスキルアップしても保育所補助金が増えるわけではないため、昇給に結びつきにくい。さらに、株式会社が設立した私立の保育所は、公立にはある退職手当などへの補助がなく、賃金はさらに低くなります」

こうやって見てくると、私自身の経験からしてもうなずける理由です。

前二者については簡単にクリアできる課題ではありませんし、昇給のしくみについては社会福祉法人立私立保育所の場合には自らが解決できそうな課題でありながら、保育士のスキルや経験を賃金に反映させる体系を作り出すことはそう簡単ではありません。

 

さて、学校関係者の皆様はこの記事をどんなふうに読んでいらっしゃるでしょうか。

 

学校教員の給与水準は世間一般の平均値からするとかなり高めであると、私自身は感じています。

仕事そのものの大変さはもちろんですが、社会的意義の大きさと、そのことに対する保護者や政府の意識の高さがその要因として無視できないのだろうと、個人的には考えてきました。

 

しかし、その理由から考えると、保育士も同水準であるべき。

それでもそうなっていないことの根底には、

「子供を保育所に預けるのは、親が怠けているからだ」

という、親以外の認識が影響してはいないでしょうか。

 

幼少期は親がしっかりと子供の面倒を見るべきだとの価値観は、まだまだこの日本では根強いものがあるように感じます。

共働きの両親の下で育った私自身も、その寂しさを思い返すと、よく似た価値観であることを自覚できます。

しかし一方で、子育て世帯が生活していくための家計を維持するために、親が家庭で子の面倒を見られるという環境にある世帯は相当限られているのもまた事実です。

子供をめぐる社会環境の改善、さらには保育所と保育士の社会的地位の向上、両者を願ってやみません。