寝ても覚めても学校のこと。~学校経営の経営課題(人事・財務・募集・施設などなど)について考えるブログ~

大阪の学校経営コンサル会社/株式会社ワイズコンサルティングが、学校経営に関する情報を収集し発信するブログです。

私立小同士の取り決め「ウチの児童を転入させたらダメ」 公取委が問題視したワケ

先日ニュースになっていたこの話題を採り上げてみます。

弁護士ドットコムNEWSより。

 

私立小同士の取り決め「ウチの児童を転入させたらダメ」 公取委が問題視したワケ |弁護士ドットコムニュース

 

私学関係者の皆さんはすでにこの内容をご存知のことと思います。

簡単に概要のみ記載しますと、先ごろ新設された私立小学校の児童募集にあたり、他の私立小学校に通う児童が転入しないように各校が配慮した、というものです。

記事によれば、「西日本の私立小59校が加盟する西日本私立小連合会(西私小連)と、大阪府京都府兵庫県の私立小連合会の4団体は、それぞれ近隣府県の加盟校間の転入は原則として認めないという取り決めを結び、加盟校に周知していた」とのことで、これが独占禁止法に触れる可能性がある、との指摘がなされています。

 

独占禁止法公正取引委員会という存在は私学からは縁遠いもののように感じますが、今回の記事を読むと、必ずしもそうとは言えないことがよく分かります。

 

まずは独占禁止法で禁じられている事項について。

弁護士ドットコムでコメントしている弁護士さんはこのようにおっしゃっています。

「まず、独禁法の基本から説明しましょう。同業者で構成している業界団体が、価格の一斉引上げや顧客の割り当てを取り決める等、団体の構成員(企業)の間の競争を回避させる行動をした場合、顧客にとってはマイナスになってしまいます。

そのため、独禁法では、業界団体が、こうした取り決め等により『一定の取引分野における競争を実質的に制限すること』を禁止しています(独禁法8条1号)」

(中略)

「小学校を運営する学校法人も、児童に対して教育サービスを提供する取引を継続的に行っている『事業者』にあたり、西私小連等の4団体は『事業者団体』にあたります。ですから、企業と同じように考えることができます」

(中略)

「4団体の取り決めは、競争回避のための取り決めであるため、独禁法上は問題になります。

ただ、私立小の間の競争は転入の場面だけではなく、入学の場面でより強く生じているのではないかとも思われます。転入に関する取り決めだけで『競争を実質的に制限する』という競争への大きな悪影響が生じていたといえるのか、若干疑問は残ります。

また、こうした取り決めは、『保護者の意向で転入させられることによる児童への負担回避のため』に行われていた面もあるかもしれません。こうした事情は、一般論としていえば、独禁法違反にならない理由(正当化理由)として考慮される可能性がありえます。

そうは言っても、転入により児童に負担が生じるかどうかは一律にはいえないでしょう。そのため、転入を原則として禁止することは手段としてやり過ぎと判断され、正当化理由として認められにくいと考えられます」

少子化の影響を受け、児童・生徒・学生の募集はこれまでとは比較にならないくらい大きな課題になりつつある昨今。

一方で、上記の通り公正な競争を阻害する可能性を指摘されるような取り決めは、今回のように警告を受けたり、場合によっては罰則の対象になったりすることもあり得ます。

 

あくまでもフェアな状態で、私学同士、あるいは公私間での競争が図られ、その結果として想定した規模の子供たちが集まってくれる…

理想論だと言い切ってしまうのは簡単なことですが、こんなときこそ「できない理由を探すのではなく、できる方法を探すこと」が重要です。

 

公私間の公正な競争は近年の制度上、若干脅かされているようにも感じますが、与えられた環境の中で最善を尽くすこともまた忘れてはなりません。

生徒募集のPDCAをしっかり回していく必要がありそうですね。

7/24のセミナーも生徒募集がテーマです。ぜひお越しください)