表題で一気に引き込まれたこのニュース。
本日は新しい学校の形を模索する、こんな記事をお届けします。
日本経済新聞より。
居酒屋、昼は学舎に NPOが高校中退者ら支援 :日本経済新聞
居酒屋と学び舎という、どちらかと言えば両者の性質は正反対、という事業のコラボレーション実例です。
大手飲食チェーン「養老乃滝」が、NPO法人「高卒支援会」から教室の手配について相談を受け、同社社長が東京都内の1店舗について無償提供を決断。
午前9時から営業準備の始まる午後3時まで、宴会室を使っての授業が実施されているとのこと。
授業後には店員による掃除指導もあるそうで、なかなかうまいしくみになっているな、と感じました。
NPO法人高卒支援会は、様々な理由で高校を中退した子供たちを支援している団体で、普段は東京都内の教室で個別に学力指導を実施されているそうです。
記事にはNPO法人「日本フリースクール協会」によるコメントとして、
『引きこもりや不登校の支援団体は運営が厳しく、特に施設の確保が難しい』
『家賃が払えず閉鎖したフリースクールもたくさんある』
といった内容が紹介されています。
この記事で気づいた点が2つ。
ひとつは、事業展開上のマイナスをうまく克服しているという点。
居酒屋にとって昼間の時間帯はランチの提供程度しか収入を得にくいところ、これを社会貢献活動に充てることは、小さなリスクで社会的責任を果たすことにつながり、企業イメージはプラスに動くだろうと考えられます。
NPO側も、まとまった収入を得にくい中で、場所の確保が非常に大きなコスト要因になるところ、無償で場所を借りられるのは何よりのこと。
ついでに実社会での活動に触れられるのも意義深いですよね。
両者ともにプラスの効果が得られるところに、この活動の継続可能性を感じます。
もうひとつは逆に、教育活動は施設さえなんとかすればいいという話ではない、という点。
後日このブログでもぜひ記事にしたいと思っているのですが、先日訪問したある学校法人さんは、高い目標と現実とのギャップに苦しむ子どもたちに対して学習の場を提供しておられるのですが、その活動の多くは「教えること」ではなく「カウンセリング」であるということをお聞きしました。
「授業」ではなく「カウンセリング」こそが苦しむ子供たちに必要不可欠なものであることをお伺いし、納得とともに深く考えさせられた次第です。
学校において施設設備は非常に重要であるがゆえに、そちらの充実に気を取られそうになりがちなもの。
ですが、一方で学校は人が唯一無二の経営資源です。
教職員が子どもたちに真摯に向き合えるか、その学びをいかに支援できるか、もっと言えば子どもたちが自発的に学びを継続できるような環境を作り出せるのか、という点には施設整備よりはるかに大切なことが含まれているようにも思います。
今回の事例の取組が今後どのような発展を遂げるのか、楽しみです。
と同時に、様々な形態の学校が増えていこうとしている現在、既存の私学の今後の方向性はよりいっそう明確なものにしていく必要があるように感じます。