寝ても覚めても学校のこと。~学校経営の経営課題(人事・財務・募集・施設などなど)について考えるブログ~

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平成26年度 教育の総合的効果に関する定量的分析

こういう分析があるのですね。

文科省HPより。

 

平成26年度 教育の総合的効果に関する定量的分析:文部科学省

 

報告書の冒頭、このような分析を行う趣旨・目的についてこんなふうに書かれています。

我が国が抱える「経済成長」や「雇用の確保」等の課題を解決し、国民一人ひとりが豊かな人生を実現するとともに、社会全体が成長・成熟し、安全で安心して暮らせる環境を構築するためには、未来への投資である教育を充実させることが極めて重要である。

他方、社会保障費の負担増加をはじめとして、厳しい財政環境におかれている昨今の状況下では、教育に投資することの意義を、具体的なエビデンスに基づいて示すことが求められている。同時に、公的資金を投入することに対する説明責任の観点からは、教育投資の効果を広く国民に対してわかりやすく説明することも肝要である。

そこで本調査研究においては、国際的な研究動向を十分に踏まえた上で、科学的な手法を用いて我が国における教育投資の経済的・社会的効果を分析し、その結果をわかりやすく整理する。

教育の効果を測定することは相当困難である、というのは学校における定説?とも言え、評価制度等の学校への導入が進まない一つの要因になっているように思います。

ところがこの表題にあるように、教育効果を定量的に分析するという試み。非常に興味深く感じます。

 

この報告書はかなりボリュームがあるのですが、結論の導出のためにどのような過程をたどったのか、という点に相当程度のページ数が割かれていますので、もし結論やデータだけが見たいという方は報告書の後ろからご覧いただければいいのではないでしょうか。

このブログでも総括の一部のみ引用しておきます。

本調査研究においては、我が国における教育の経済的・社会的効果を明らかにするため、関連する先行研究を概観した上で、アンケート調査を行い、当該結果と既存統計を用いて定量分析を行った。この結果、教育関連指標(認知能力と非認知能力)によって、個人レベルの効果(雇用獲得、所得向上、結婚促進、健康増進)、及び社会レベルの効果(税収増加、少子化克服(子供増加)、医療費削減)が、直接的・間接的に創出されている可能性が確認された
具体的には、男性について、文科系科目の成績(国語、英語、社会の成績の標準得点を合計した値)が学歴等を高めることを通じて、個人レベルで雇用(常勤)、所得(収入)、結婚、健康に対して間接的にプラスの影響を与えており、これらを通じて社会レベルで税収増加、少子化克服、医療費削減に寄与している。また、理数系科目の成績(数学、理科の成績の標準得点を合計した値)は、1 ポイント上昇すると雇用(常勤)確率を約 1.13 倍に高め、年収を約 20.3 万円高めると同時に、個人収入の増加を通じて、一人当たり年間約 2.7 万円(1 世代の 6 万人当たり約 16.2 億円)の税収増加をもたらすことが期待される。
さらに、非認知能力(構成要素の税収増加)は、1 ポイント上昇すると雇用(常勤)確率を約 1.049 倍に、年収を約 7.6 万円、結婚確率を 1.088 倍に、健康状態(5 段階での自己評価)を 0.031 ポイント高めることが期待される。これらにより、非認知能力が 1 ポイント上昇することで税収は一人当たり年間約 1 万円(1 世代の 6 万人当たり約 6 億円)増加し、医療費(公費負担)は一人当たり年間約 1,700 円(1 世代の 6 万人当たり約 1 億円)削減され、また非認知能力(12 段階)が 1 段階上昇することで一人当たりの子供人数は約 0.03 人(1 世代の 6 万人当たり約 1,800 人)増加することが期待される。
女性については、文科系科目の成績が 1 ポイント上昇すると年収が約 4.0 万円高まり、これにより一人当たり年間約 2,000 円(1 世代の 6 万人当たり約 1.2 億円)の税収増加がもたらされることが期待される。また、理数系科目の成績は学歴等を高めることを通じて、個人レベルで雇用、所得に対して間接的にプラスの影響を与え、社会レベルで税収増加に寄与している。他方、文科系科目の成績、理数系科目の成績はいずれも、常勤雇用の獲得が結婚に対してマイナスの影響をもたらしているため、健康増進及び医療費削減に対してはプラス、マイナス双方の影響を、結婚促進及び少子化克服に対してはマイナスの影響を間接的に与えている。
非認知能力の影響としては、1 ポイント上昇すると雇用(常勤)確率を約 1.046 倍に、結婚確率を 1.088 倍に、健康状態を 0.047 ポイント高めることが期待される。さらにこれらを通じて、非認知能力が 1 ポイント上昇することで医療費(公費負担)は一人当たり年間約1,800 円(1 世代の 6 万人当たり約 1 億円)削減され、非認知能力(12 段階)が 1 段階上昇することで一人当たりの子供人数は約 0.02 人(1 世代の 6 万人当たり約 1,200 人)増加することが期待される。

 私自身、途中経過を読み飛ばしていますので、どうやってこのような結論が導かれるのか全く理解できていませんが、それにしてもこうやって数字で結果が出てくるのはすごいことですね。

 

ここまでのことはなかなかできないとは思いますが、各校が自らの教育効果について効果的に伝える方法を見つけ出せれば、魅力の発信はかなりスムーズに進むのではないでしょうか。

幸いなことに、学校には卒業生の膨大なデータが眠っています。

これらのデータの活用、ぜひともチャレンジしてみていただきたいと思います。