寝ても覚めても学校のこと。~学校経営の経営課題(人事・財務・募集・施設などなど)について考えるブログ~

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「時間外勤務多い」教員の8割超

教員の意識調査の結果が発表されていましたので、本日はこちらをご紹介いたします。

YOMIURI ONLINEより。

 

「時間外勤務多い」教員の8割超…有識者団体 : 社会 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)

 

今回の記事が引用している調査結果は「日本の教育を考える10人委員会」が行ったもので、対象は全国の公立小中学校の教員。

残念ながら私立校の教員は含まれていませんが、回答総数は1,044人で、一定の信頼を置けそうな数になっています。

今回の記事には時間外勤務と仕事へのやりがいについてのみ採り上げられていますが、「日本の教育を考える10人委員会」HPを拝見すると、調査自体は他にもいろいろと質問項目があり、それらの結果についてもある程度まとめられています。

 

ちなみに調査結果はこちらからご覧いただけます。

教員アンケート調査結果から得られた示唆

 

以下、やや長くなりますが結果の概要を引用しておきます。

個人的には非常に示唆に富む内容になっていると感じます。

0.全体的傾向

地域差よりも勤続年数の差が回答に影響を与えている場合が多い(時間外勤務状況、研修状況、管理・統制の強化状況についての認識、教員給与に対する満足度、教員としてのやりがい感等)。
教師自身のやりがい感は、教員の活動内容や教員を取り巻く環境についての認識に影響を与えている(職務研修についての満足度や負担感、自主研修の参加状況、管理・統制の強化や学力・学習状況調査の公表に対する認識等)。

1.時間外勤務の状況

• 時間外勤務が多いと感じている層は全体の8割以上となっており、時間外勤務の原因としては、事務処理、授業の準備、採点や生徒の成績に関わる業務が中心である。
• 勤続11~20年、21~30年の層で時間外勤務が多いという回答割合が高い傾向がみられるほか、教職員が不足していると感じている層でも、残業が多いと回答している割合が高くなっている。
• 時間外勤務時間が増えれば、時間外勤務が多いと感じる層は増えるが、本人が時間外勤務が非常に多いと感じているからといって、必ずしも時間外勤務時間が月100時間を超える教員が多いわけではない。時間外勤務についての本人の主観はかなりばらつきがある
• 時間外勤務の原因については小中学校で大きく異なる。小学校教員では様々な業務を残業の原因ととらえているのに対し、中学校教員では部活動対応を原因ととらえている。

2.研修の状況

• 国や自治体が実施している職務研修(法定研修を含む)の内容に対しては、満足していない層が全体の7割近くを占めているほか、職務研修に負担を感じる層は全体の8割以上を占めている。不満足と負担感が職務研修に対する認識となっている。
勤続年数が短い層ほど、職務研修の内容に満足しているという回答割合が高まる。また、やりがいを感じている層ほど、満足しているという回答割合が高まる傾向がみられる。
• やりがいを感じていない層ほど、職務研修について負担を「非常に感じる」という回答割合が高まる傾向がみられる。
自主研修の参加について、やりがいを感じている層ほど「参加できている」という回答割合が高まる一方、やりがいを感じていない層ほど「参加したいと思わない」という回答割合が高まる傾向がみられる。
• 自主研修に参加しない理由について、勤続年数が短い層ほど、「時間がない」という回答割合が高まる傾向がみられる一方、勤続年数が長い層ほど、「参加したい内容がない」という回答割合が高まる。

3.管理・統制の状況

• 学校における様々な活動に対する「管理・統制」の強化状況について、強化されたと感じる層は全体の7割以上を占める。
• 管理・統制を感じる点としては、「学力向上対策」、「保護者対応」、「児童・生徒の指導」が中心である。
• 勤続年数が長いほど、管理・統制の強化を「強く感じる」という回答割合が高まる傾向がみられる。また、やりがいを「強く感じている」層を除くと、やりがいを感じないほど管理・統制の強化を「強く感じる」という回答割合が高まる傾向がみられる。

4.教育にかかる費用の状況

• 学校内の、教育にかかる費用についての認識をみると、品目にかかわらず全体的な傾向として、費用が足りていないという回答が多い。特に「機器購入費」、「出張旅費」、「研究図書購入費(教育用)」で費用が足りないとする回答割合が目立つ。
• 費用の不足により、十分な教育活動ができないと感じている層は全体の7割以上に達している。
• やりがいを感じる層ならびにやりがいを感じない層の両方で、費用の不足により教育活動ができないと感じることがあるという回答割合が高まる傾向がみられるが、やりがいを感じない層ほど、教育活動ができないと感じるという回答割合が高まる傾向もみられる。

5.教職員数の不足感に関する状況

• 回答者自身が勤務する学校で、常勤・非常勤とも教員が不足していると感じる割合は、半数近くとなっている。常勤・非常勤の別にかかわらず教員が足りないとする割合は、全体の9割近くに達している。
• 一方の職員についても、回答者自身が勤務する学校で不足していると感じている層は全体の8割以上となっている。

6.教育をめぐる制度変更についての認識

• 教員免許更新制度の導入について、8割以上が教員の資質向上につながっていないと回答している。
全国学力・学習状況調査結果の公表については、全体の6割が反対である。賛成とする層は全体の約2割(19.9%)と少数派になっている。
• 勤続年数が長いほど、全国学力・学習状況調査結果の公表について、「反対」とする回答割合が高まる傾向がみられる。また、勤続年数が短いほど、公表の是非について「わからない」とする回答割合が高まる傾向がみられる。また、やりがいを感じていない層ほど、 「反対」とする回答割合が高まる傾向がみられる。
• 免許更新制度については、勤続年数ややりがい感等による違いはあまり見られない。

7.教員給与に対する満足度

• 現在の給与に満足しているという回答割合は全体の約3割となっている反面、現在の給与に満足していないという回答割合は全体の7割近くに達している。
• 勤続年数が短いほど、現在の給与に満足しているという回答割合が高まる傾向がみられるが、勤続年数が多いほど、満足していないという回答割合が高まる傾向がみられる。
• やりがいを「強く感じている」層を除くと、やりがいを感じていない層ほど、給与に満足していないという回答割合が高まる傾向がみられる。

8.教員自身のやりがいについての認識

• 教師としての仕事にやりがいを感じているという回答割合は全体の7割以上となっている反面、やりがいを感じていないという回答割合は全体の約1割存在する。
• 勤続31年以上の教員を除くと、勤続年数が短いほど、やりがいを感じているという回答割合が高まる傾向がみられる。
「ほとんど時間外勤務はしていない」層を除くと、時間外勤務の時間が多いほど、やりがいを感じているという回答割合が高まる傾向がみられる。
支援体制もしくは必要な時に教員が相談できる環境が整っているところでは、教員がやりがいを感じている傾向がみられる。また、教員がやりがいを感じられるような支援を行っている教育委員会・自治体の教員はやりがいを感じる傾向がみられる。
給与に満足している層ほど、やりがいを感じている傾向がみられる。一方、「給与にまったく満足していない」層でも、やりがいを感じているという回答割合は6割(60.9%)を占める。

9.職場で改善したいことに関する認識

• 現在の職場で仕事を行ううえで、改善したいと考えていることとしては「雑務が多いこと」、「労働時間が長いこと」の2つの回答割合が相対的に高くなっており、過半数を占めている。この2つに次いで、「保護者対応の負担が多いこと」、「職務に比べ報酬が少ないこと」が挙げられている。
• 勤続年数の短い層ほど、「労働時間が長いこと」という回答割合が高くなる傾向がみられる。一方、勤続年数が長いほど、「保護者対応の負担が多いこと」や「職務に比べ報酬が少ないこと」といった回答割合が高まる傾向がみられる。
教員としてのやりがいを感じる層では、「雑務が多いこと」、「労働時間が長いこと」を改善したいという回答割合が高まる傾向がみられる一方、やりがいを感じない層では、「職務に比べ報酬が少ないこと」、「保護者対応の負担が多いこと」という回答割合が高まる傾向がみられる。

10.教員に対する支援体制についての認識

• いじめや非行問題、保護者対応などについて担任で対応できない場合、学校として対応する体制(教育委員会の支援体制を含む)が構築されているかどうか尋ねたところ、約半数が、「体制が構築されており、相談できる環境がある」と回答している。しかし、「体制はあるが、形式的であり、あまり機能していない」とする回答も約3割を占めている。
• 機能しているかどうかにかかわらず、体制が整備されているとする回答割合は全体の8割となっている。一方、体制の整備状況にかかわらず、教員が相談できる環境があるとする回答割合は全体の6割以上となっている。
• 教師自身が仕事のやりがいや生きがいを感じられるようにするため、教育委員会や自治体が何らかの支援を行っているという回答割合は全体の2割未満にとどまる。

(太字及び下線は筆者による)

ご覧になってみていかがでしょうか。

やりがいがいろいろな意識に影響を及ぼしていることが客観的に理解できる資料ではないでしょうか。

給与が安い、というのはひょっとすると表面的な意思表示であって、核心はそこにはないのかもしれない、とすら思います。

 

学校において教員はサービスの最前線。

つまり、教員の意識は学校の教育力を左右する非常に重要な要因です。

やりがいを感じながら勤務してもらえる環境作りがいかに大切か、改めて感じることができた調査結果でした。