寝ても覚めても学校のこと。~学校経営の経営課題(人事・財務・募集・施設などなど)について考えるブログ~

大阪の学校経営コンサル会社/株式会社ワイズコンサルティングが、学校経営に関する情報を収集し発信するブログです。

教員に年俸制導入

本日は年俸制導入の話題を採り上げます。

YOMIURI ONLINEより。

 

富大、教員に年俸制導入 新年度から : 教育 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)

 

今回の記事の内容は、段落ごとに気付きがありましたので、記事を引用しつつコメントを入れさせていただこうと思います。

まずは最初の段落。

富山大は2015年度から、国立大学法人に移行する前から勤務する教授や准教授らに年俸制を導入する方針を固め、4日から希望する教員の公募を始めた。優秀な実績を上げた教員に支給金額を加算し、意欲を引き出すのが狙いだ。16年末までに教員約840人のうち1割程度を年俸制に移行することを目指す。

まず、年俸制の導入は行うものの、これは「希望する教員の公募」により移行するものであり、対象は教員全員ではない、ということが書かれています。

続いて。

 同大が検討している年俸制では、同大の教員約840人の業績を「授業」「研究」「地域社会貢献」などの項目で評価して数値化。S(スーパー)、A、B、C、D、Eの6段階にランク分けして年俸金額に反映させる。

 例えば、年収1000万円の教授の業績が最高の「S」ランクと評価された場合、翌年の年俸は、業績給(300万円)の30%を上乗せした1090万円となる。「A」なら業績給の20%を上乗せした1060万円、「B」なら1015万円。「D」評価以下の場合は減額され、最低ランクの「E」では業績給の20%が減額されて940万円となり、最大150万円の差が生じる。

この内容から、年俸制の前提として評価制度が存在することが分かります。

年俸制成果主義とセットで語られることが多いのですが、必ずしも同一のものではありません。しかし現実にはセットになるケースが多いのもまた事実です。

そして年俸制の場合、当年度の業績が翌年度の年俸に反映されることになります。

スポーツ選手の契約更改をイメージするとよいかもしれませんね。

さらに続けましょう。

 同大は2004年に国立大学法人となり、教員の給与体系を独自に決定できるようになったが、国立大学時代から勤務する教員を対象に、年俸制を導入するのは初めてとなる。

 国立大学時代から勤める教員は、勤続年数が長いほど退職金が加算されるため、定年まで同じ大学に残ることを望む教員が多い。年俸制に移行すると、退職金についても一定額を年俸に組み入れることができる。定年前の教員でも、私立大学や民間研究機関などへ転職しやすくなり、空いたポストに若手・外国人の常勤教員を登用するなど人事の流動化を図ることもできる。

大学教員が公務員でなくなったことから、給与体系を独自に持てるようになった、ということなのでしょう。

その意味では、私学と同じ経営環境になったと言えるのかもしれません。

そして、この内容からは年俸制の原資として退職金の一部を取り込んでいることが伺えます。

つまり、仮に人件費総額が一定であったとしても、その配分方法や配分基準を変えることによって、経営課題である「人事の流動化」を図るという目的を達成しようとされているようですね。

続けましょう。

 教員以外の総務・広報などの事務系職員などについては年俸制導入の対象外とする。

事務系は対象外なのですね。

こちらは人材を流動化させたくないのか、評価に馴染まないのか、あるいは年俸制導入により人件費が膨らむ可能性があり、その対象を広げたくないのか…理由は推測するしかありませんが、私がよく耳にする「給与制度改革はまず職員を対象に、その後教員に広げる」という私学のパターンとは順序が逆になっているように感じます。

あと2段落です。

 文部科学省によると、国立大学時代から勤める教員に対して、年俸制を導入することを決めた国立大学法人は86法人のうち既に50以上に上っている。

国立大学法人では年俸制が主流になっているのですね。

成果を給与に反映させる、しかも賞与だけでなく賃金全体に、という方法が一般化しているようです。

経営サイドからすればモチベーションを上げつつ人件費を流動化したい、という意図が強いということでしょうか。

そして最後の段落。

 富山大の担当者は「年俸制導入で人事が流動化すれば、若い教員が安定したポストに就きやすくなる。海外から優秀な研究者を獲得しやすくなるなどの効果も期待できる」と話している。

なるほど、若手登用とともに、海外基準での給与制度を見据えているということなのですね。

退職金から業績連動給へ、人件費の重点は確実に移動しているようです。

 

以上、特定の学校を採り上げて、ちょっと詳しく記事を読んでみました。

各校の賃金制度を考える際のひとつの参考になれば幸いです。