給与制度改正のお手伝いをする機会を頂くことがある私にとっては、特に気になるニュースです。
毎日新聞より。
不払い賃金:固定残業代含んでいた基本給?支払い求め提訴 - 毎日新聞
これは学校ではなく、一般企業の事案です。
記事に記載された概要は以下の通り。
訴状などによると、元社員は昨年5月に入社。就職説明会で配布されたパンフレットや民間求人サイトの求人には「基本給30万円」と書かれていた。入社後は都内の店舗に配属され、連日午前8時から午前0時前後まで働いて同月には150時間、翌月は200時間の残業を行った。その後、給与明細の記載に「基本給15万円、固定割増手当15万円」とあり、基本給はパンフの半額で、60時間分の残業代が固定で支払われていることが分かったという。
現時点では提訴したという段階ですので、裁判がどのように進んでいくかは今後の話。
ですが、待遇に関しては十分留意する必要があることが分かります。
今回のケースでは、固定時間外手当を基本給と分けて表示していなかった点が大きな論点になりそうです。
固定時間外手当というのは、残業の長さに応じて支払われる時間外勤務手当を、その時間の長さに関わらず、予め固定的に支給するものです。
これは事務処理の簡便化に資することに加え、時間外勤務の上限目安を示すという意味においても有用である、と個人的には考えています。
ただ、この制度を導入したからと言って、実際の残業時間で計算した金額が固定時間外手当を超える場合には実額を支払う必要があるほか、今回のケースのように基本給とは分けて明示する必要があるなど、運用には十分気を付けねばなりません。
支払う側からすると固定的に支払うことから「基本給の一部」として捉えがちですが、そうではないことを経営陣はしっかり意識しておかねばなりません。
固定時間外手当の制度を導入されている学校法人さんはまだまだ少数派だと思いますが、その原因のひとつは、これまで残業そのものが十分に把握されていなかったことにあると感じています。
今後を見据え、残業時間の把握及び残業手当の支給を念頭に置く場合、私自身はこの制度は検討の余地が十分ある制度だと感じています。
注意点をよく理解したうえで、ご検討いただければと思います。