ややブームにすらなりつつある?小中一貫校。
制度化に向けてまっしぐら…と思われた矢先、冷や水をかぶるようなニュースが流れました。
朝日新聞より。
小中一貫校、子どもの現状は? 大学のグループ、比較調査:朝日新聞デジタル
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この調査は2013年5~11月、全国の小中一貫校のうち8校(約2千人)と、一貫校でない56小中学校(約6,700人)の小4~中3生から回答を得たものを分析しています。
各設問に対し、「とてもそうだ」「少しそうだ」など五つの選択肢から選択する形での調査。具体的な調査項目は「目標に向かって頑張っている」「腹が立つことが多い」など、『学力』ではなく、子どもの「気持ち」に着目したものであるのが興味深く感じられます。
点数化して分析した結果が記事にいくつか掲載されていますので、それらをまとめると以下の通りとなります。
○生活の満足感…小4~小6と中3で一貫校の方が低い
○目標を持つこと/自信…小4~小6で一貫校の方が低い
○怒りの感情…小4と中3で一貫校の方が高い
○疲労…小4、小6、中3で一貫校の方が高い
○学校への適応の度合い…小4、小5で一貫校の方が低い
○学業…小4で一貫校の方が低い
○運動…小4と小5で一貫校の方が低い
○自己価値…小4~小6で一貫校の方が低く、中1で一貫校の方が高い
○友人関係…小4~小6と中3で一貫校の方が低く、中2で一貫校の方が高い
こうやって見てみると、一貫校に通う子どもたちが気持ちの面では相対的に苦しんでいるという結果が出ているように感じます。
いわゆる中1ギャップへの対応として有効とされる小中一貫校ですが、もしこのような傾向が事実だとすれば、拙速な制度化や導入は慎む必要がある、という論調につながることも考えられます。
ただ、この記事は「一貫校に不利な結果」にやや偏っているように感じます。
記事には「明確な差が見られたもの」について記載したというニュアンスが示されていますが、果たして記事に記載のない学年については、「明確な差がない」のか「一貫校に有利な結果だからあえて載せていない」のか。
原典が見当たらないので検証できないのですが、この点ははっきりしておきたいところです。
一方で、何事にも長所と短所は存在するという好例だとも言えます。
小中一貫校設置の動きが広がる中で、子供の成長にとってそれがどのような影響を及ぼすかについて、プラスもマイナスもしっかり見据えて考察することが必要です。
私学においても小中一貫、中高一貫、高大接続など、その枠組みを変えることによって経営課題の解決を狙うケースは決して少なくないと思われます。
しかしながら、その枠組みを変える際には利点と欠点の両方があるのは当然のことであり、そのいずれからも目をそらさず、学内でしっかり意見をぶつからせることが大切ではないでしょうか。