寝ても覚めても学校のこと。~学校経営の経営課題(人事・財務・募集・施設などなど)について考えるブログ~

大阪の学校経営コンサル会社/株式会社ワイズコンサルティングが、学校経営に関する情報を収集し発信するブログです。

「40人学級は国を誤る」

ちょっとびっくりするような題名でごめんなさい。

ニュースの表題がこれだったもので、ついそのまま引いてしまいました。

本日は産経ニュースより。

 

「40人学級は国を誤る」 下村文科相、財務省方針に反論 - 産経ニュース

 

40人学級が本当に良くないのか、という点についてはいろいろと価値判断があるところですし、私自身もクラスの人数が多いことにそれほど大きな難があるとは思ってはいませんので、このコメントの妥当性については各校のご判断にお任せすることとしまして。

 

この発言のもとは財務省の主張にあります。

記事によれば、財務省

『35人学級について教育上の明確な効果がみられないとして、別の教育予算や財政再建に財源を振り向けるべき』

と主張し、今月27日の財政制度等審議会

『40人学級に戻せば、必要な教職員数が約4千人減り、人件費の国負担分を年間86億円削減できる』

との試算を提示する予定とのことです。

これを受けて文科大臣は「財源論だけでこの国を誤ることをしてはならない」とコメントしたようです。このコメントをもとに、この記事は表題をつけたのでしょうが…ちょっと飛躍しているような気もします。これもさておき。

 

この記事で私が感じたのは2点。

 

1点は、1クラスあたりの児童生徒数と学校財政の関係性。

原則的には1クラスあたりの子どもの数を増やすと、相対的にクラス数は少なくなり、結果、担任数が少なく済みます。つまり、教員人件費が軽くなるわけです。

クラス内の生徒数を何人にするのか、という点は私学ごとに方向性が異なる点であろうとは思いますが、仮に少人数学級制を採用しようとするとどうしても引っかかってくる課題がこの人件費との関係性でしょう。

各校が考える望ましい教育環境の実現には、財政の問題は避けて通れません。

今一度しっかりと議論を尽くしていただきたいと思います。

 

もう1点は、クラス担任の業務負担の軽減についてです。

実はこの記事の中には、こんなことが書かれています。

文科相は、経済協力開発機構OECD)による教育状況の調査を引用し、「(日本の教師は)他国と比べ平均授業時間は少ない方だが、事務処理などが圧倒的に多い」と説明、きめ細かな教育を行うに当たり35人学級の必要性を改めて強調した』

ん?それって少人数学級の理由になるの?と、私は直感的に思いました。

確かにテストの採点やノートのチェックなど、クラス人数が少ない方が事務処理が少なくなるのは確実です。

ですが、クラス人数に関わらず、学校全体の分掌事務として各担任が抱えている事務量も決して少なくありませんし、部活動等の時間もそれ以上に多くなっています。以下、文科大臣も引用したOECDによる調査結果の一部を引用します(出典:国立教育政策研究所OECD国際教員指導環境調査(TALIS)のポイント」。太字は筆者による)。

<教員の仕事の時間配分>

○ 日本の教員の1週間当たりの勤務時間は参加国最長(日本53.9時間 、参加国平均38.3時間)。
○ このうち、教員が指導(授業)に使ったと回答した時間は、参加国平均と同程度である一方、課外活動(スポーツ・文化活動)の指導時間が特に長い(日本7.7時間、参加国平均2.1時間)ほか、一般的事務業務(日本5.5時間、参加国平均2.9時間)、学校内外で個人で行う授業の計画や準備に使った時間(日本8.7時間、参加国平均7.1時間)等も長い傾向にある。

 というわけで、担任の業務負担軽減のためには、クラス当たりの人数を減らすことよりも効果的な方法はあるのかもしれません。

この点についても、各校において考察すべき点のような気がします。

 

以上、少々長くなってしまいましたがご容赦ください。