寝ても覚めても学校のこと。~学校経営の経営課題(人事・財務・募集・施設などなど)について考えるブログ~

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官民一体校:佐賀・武雄市、説明会 保護者、不安と期待

佐賀・武雄市で今年度から始まった、公立小学校と民間学習塾との提携。

このことをめぐっては、近時多くのメディアが採り上げています。

そこで本日はいくつかの記事を採り上げて、内容を見てみようと思います。


まずは今月6日付の朝日新聞から。

花まる学習会代表が指導法語る 武雄の提携説明会(全文読むには会員登録が必要です。ご容赦ください)

この記事では、実際の学校における指導法について、武雄市と提携した学習塾の代表が行った説明を紹介しています。

記事によればその指導法とは『毎朝15分の朝学習「モジュール授業」や異学年での青空教室などを通じて、論理力や発想力、問題解決力などを育んでいく指導法』とのこと。

正直なところよく分からないな…と思ったのですが、同記事には説明会に参加した保護者のコメントとして

「理念はわかったが、授業の中身がどんなものかはっきりしなかった」

「今の授業内容が、どう変わるのかわかりづらかった。先生たちの負担増も気がかり」

といったものが紹介されていました。


同じく、提携説明会の様子が報道されているのが毎日新聞

官民一体校:佐賀・武雄市、説明会 保護者、不安と期待 「花まる式、なじめるのか」「子供にとってはいいこと」

この記事では「モジュール授業」について少しだけ解説がなされており、

『低学年では児童5、6人に講師が1人つき、四字熟語や文章朗読、作文などを実施。

 1回90分の授業を数分~20分で区切り、約10のプログラムを行う』

と書かれていました。

この記事でも教員の負担増への懸念が示されており、当日の保護者の質問として「先生への負担は増えるのでは」という内容が紹介され、

かつ佐賀県職員組合書記長は「教育課程に踏み込めば公教育がゆがめられる。武雄市の教員が他の自治体に転勤した時、転勤先で指導力が通用するのか環境になじめるか」

と指摘しているとのこと。

新たな取り組みにはある程度反発がつきものですが、現場への浸透が今後の大きな課題なのかもしれません。


続いて市長サイドの意図を汲んだ記事として、産経新聞から。

「反転授業」で教育に風穴を 本丸は「官民一体型学校」 佐賀県武雄市・樋渡啓祐市長

この記事では反転授業のことが中心に書かれています(反転授業とは「従来の復習重視のスタイルから予習重視に『反転』させた」授業のこと<記事内の説明>)。

そして、反転授業が教育改革の「突破口」、官民一体型が「本丸」という位置づけであるとの樋渡市長のコメントが掲載されています。

現時点では武雄市が教育の枠組みをどんどん変える提案を先行しているように見えますが、もしこれが全国的に波及すれば、私学の特色が薄まってしまうことも十分に考えられそうです。


なお反転授業に関しては、具体的に内容の研究が進められている様子が教育家庭新聞の以下の記事に掲載されています。

”スマイル学習”本格実施―佐賀県武雄市

反転授業は「スマイル学習」という呼び名になっていることをこの記事で知りました。

なぜスマイルなのかといえば、「Smile=School Movies Innovate the Live Education-classroom」で、「教員の動画で教室の学びを革新する」意、と記事末尾にあります。

何だか無理やりな英語のような気もしますが、それは脇に置いておくことにしましょうか。


反転授業の公開については以下の朝日新聞にも短めの記事がありますので、リンクのみ貼っておきます。

反転授業の公開授業始まる 武雄市


最後に、Benesse教育情報サイトに掲載された専門家コラムをご紹介して今日のブログを閉じようと思います。

官民一体型小学校誕生へ 狙いとは? 専門家が解説

このコラムには

・「官民一体型」学校は「公設民営」とは違う

・塾に丸投げするのではなく、官民のよいところを出し合って協力しながら新しいものを作り上げていく

という武雄市長と教育監の意図が書かれていました。そしてこのように結んであります。私も同感です。

『最近では少子化時代に対応して、必ずしも受験勉強に特化せず広く「生きる力」の育成を目指す民間教育事業者が増えてきています。

 土曜授業や教員研修に塾講師を招くなど、「民」への拒否感も昔ほどなくなっています。

 武雄市の試みをきっかけに、意外と早く公教育への民間参入が全国的に広がっていくかもしれません』


(文責:吉田俊也)