寝ても覚めても学校のこと。~学校経営の経営課題(人事・財務・募集・施設などなど)について考えるブログ~

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東大に行くなら「公立中高一貫校」? その実力とは

季節柄なのか、学校関連の記事があちこちに掲載されていますね。

学校経営にスポットが当たっているものは決して多くないのですが、それでも気づきは得られます。

今日は週刊朝日の記事を紹介しているYahoo!ニュースより。


東大に行くなら「公立中高一貫校」? その実力とは


昨日ご紹介した朝日新聞の特集記事も、今日はこんなテーマでした。

公立中高一貫校、あり方模索 独自色と受験、いかに両立

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まずは後者の記事からご紹介しましょう。

こちらはいくつかの公立中高一貫校の教育内容と目指すところを紹介しながら、あるべき姿を模索しているとも思える内容になっています。

記事にもありますが、中高一貫校は『特色ある教科を設けられる一方で、中高一貫教育を「大学入試突破の近道」とする見方も強い』存在。

これらを二者択一的に論じること自体に問題があるような気もしますが、学校を選ぶ児童や保護者からすれば、そのような傾向もやむを得ないのかもしれません。


ある京都の公立中高一貫校の事例。

中高一貫になって京都大など旧帝大の合格者数が倍増し、付属中の志願倍率が約6倍に。

その結果につられてか、入学の難度も上がり、京都の学習塾関係者によれば「小学校で学ぶ内容だけで合格するのはきわめて難しい」とのこと。

一方、この高校の校長は「検査は小学校で学んだことからどう考えるかを見る点で私立中入試とは全く違う」とコメント。見解の違いは明らかです。

もしこの校長が言うのが学校の方向性であるなら、そのことが表現されていないこと、あるいはマーケットに伝わっていないことは大きな課題だと言えるかもしれませんね。


別の事例。

鹿児島県が来年度開校する公立の全寮制男子校は宇宙航空研究開発機構JAXA)と連携し、「宇宙学」という授業を展開する予定、とのこと。「宇宙学は避けては通れない教育資源」との認識のようです。

が、教育内容の第一に掲げたのは「中高7限授業の学習指導で難関大学への道をひらく」こと。宇宙学の授業は高校1年までで、同校の校長就任予定者は「高校2年から勉強漬けになるのも仕方ない」とコメント。

宇宙学はなぜその勉強漬けの範疇外なのか、疑問を感じてしまいます。

そして、この学校の説明会に訪れた神奈川県の小5の父親は「息子の夢は宇宙飛行士。受験対策なら地元でできるし、今は何とも決断できない」と話されています。


中高一貫校は、公私を問わず、3年ずつという短期間の組み合わせではなく、6年間という長い時間を有意義に使えることが大きな特徴であり、長所であると言えます。

その中で、進学実績を第一に考える風潮がサービスをする側にも受ける側にも強くイメージされ過ぎているように思います。

この記事で紹介されている公立校が実際にどのような理念を持ち、どのような活動をされているのか、現場まで知っているわけではありませんので軽々しく意見はできませんが、少なくとも「この学校でしかできないこと」をとことん追求しているとは感じられませんでした。

ここが私学の腕の見せ所、なのかもしれません。


ちなみに、本日ご紹介したうちの前者の記事。

表題を見ると進学実績重視のように見えるのですが、これが中身を読むとびっくり。

とても興味深い内容が書かれていました。

ぜひ本文をお読みいただきたいのですが、かいつまんで記しますと、千葉のある公立中高一貫校は、初年度の競争率は27.06倍。その精鋭たち=1期生が今年初めて大学受験に臨み、その結果は

・東大…21名(前年比4名減)。現役10名中、1期生は3名のみ。

・京大…12名(前年比7人増)。現役4名中、1期生は1人のみ。

と、その期待を裏切られたと感じる関係者もいらっしゃったご様子。

ところが、同校の校長はこうコメントされています。

「うちの生徒はもっと厳しく指導し、東大へ進むよう誘導していれば40人は入ったはずです。でも、そんな教育をしていないだけ。本当に学びたいことを応援している」

「高校出身の教員たちの下で、深くじっくり学んだ内部進学生と、厳しい高校受験を経験した生徒たちが、互いに刺激し合い、学校としての“地力”は増しています」


さて、これほどまでに自分たちの活動に自信を持てる私学がどのくらいあるでしょうか。

いや、すべての私学が自信ありと胸を張っていただくために、ぜひとも組織構成員が一体となった学校経営を進めていただきたいと強く願っています。


(文責:吉田俊也)