寝ても覚めても学校のこと。~学校経営の経営課題(人事・財務・募集・施設などなど)について考えるブログ~

大阪の学校経営コンサル会社/株式会社ワイズコンサルティングが、学校経営に関する情報を収集し発信するブログです。

大学のガバナンス改革の推進について

本日は、久しぶりに文科省HPからの情報をお届けします。

組織づくりに関連して、興味深い内容が記載されていると感じました。


「大学のガバナンス改革の推進について」(審議まとめ)(平成26年2月12日 大学分科会)


全体は50ページ近くありますので、さっと読むというわけにはいきませんが、概要をつかむのであればこちらが参考になりそうです↓

「大学のガバナンス改革の推進について」(審議まとめ)(概要)


ちなみに、個人的にはこの資料の冒頭部分のほうがよりサマリーに近い気もしました↓

「大学のガバナンス改革の推進について」(審議まとめ)(本文1/4)


そして、目次にざっと目を通せば、この報告書に書かれているのがどんなことなのかを把握することができます。

Ⅰ はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1

Ⅱ 大学ガバナンスの現状について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6

Ⅲ 大学のガバナンス改革の推進について ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15

1.大学のガバナンス改革の目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15

2.学長のリーダーシップの確立・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16

(1)学長補佐体制の強化・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 17

(2)人事に関する学長のリーダーシップ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 20

(3)予算に関する学長のリーダーシップ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21

(4)組織再編等に関する学長のリーダーシップ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22

3.学長の選考・業績評価・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22

(1)学長に求められる役割の明確化・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22

(2)国立大学法人等における学長選考・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 23

(3)学長の任期・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 24

(4)学長の業績評価・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 25

4.学部長等の選考・業績評価・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 26

5.教授会の役割の明確化・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 27

6.経営組織等と教学組織との関係整理・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 30

7.監事の役割の強化・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 33

8.その他のガバナンス改革・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 34

(1)大学評価を活用したPDCAサイクルの確立・・・・・・・・・・・・・・・・ 34

(2)FD,SDの推進・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 34

(3)人材の流動性の確保・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 35

(4)経営能力のある教職員の育成・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 35

(5)積極的な情報公開の推進・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 35

Ⅳ 国による大学ガバナンス改革の支援について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 36

Ⅴ 社会による大学ガバナンス改革の支援について・・・・・・・・・・・・・・・・・ 44

Ⅵ おわりに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 46

上記太字は私が勝手に加えたものです。

もちろんこのレポートの内容は大学に関わるものですが、私はあくまで「私学経営」という観点から読んでみて、個人的に興味がある部分を太字としてみました。


中でもまず採り上げたいのは人事に関する考え方。

レポートの中では、このような内容が記載されています(筆者が勝手にまとめたもの)。

学長の人事権については,①どの部署やポストに教員を配置するかという「配置」の問題と,②当該部署・ポストに,どのような教員を選ぶかという「選考」の問題とに分けて考えるべきである。

教員の「配置」については,大学の運営全般に関係する問題であり,学問分野の重要性や,大学としての「強み」等を考慮しつつ,学長が判断すべき事項である。

一方,②の「選考」については,原則として,高い専門性を有する教員組織が,合議制の機関において客観的な判断を行い,そうした教員組織の意見を十分考慮した上で,学長が最終決定を行う必要がある。

これを読むと、配置はトップの判断、選考は現場の合議を尊重、という区別がなされています。

なるほど、そのような考え方もできそうだと膝を打ちました。


さらにもうひとつ、「経営組織等と教学組織との関係整理」という項の中には、

「学校法人の理事会と私立大学の教学組織」

と題した以下のような内容の記載がありました。

少し長くなりますが抜粋します。

◯ 私立大学については,設置者である学校法人がその運営についての責任を負う。学校法人においては,理事会が最終的な意思決定機関として位置付けられており,理事会は,設置する私立大学の教育研究状況を適切に把握した上で,必要な支援を行うとともに,予算編成,教職員や学生の定数管理,組織の再編における工夫等,学内資源の効果的な配分に努め,設置する私立大学が,特色ある教育研究機能を最大限に発揮できるように担保していく責任を負う。

◯ 理事会は,学校法人の経営に対して最終的な責任を負う。したがって,私立大学の予算編成・配分,教職員や学生の定員管理,組織の再編等に関することについては,教学組織の意向を十分に聴取しつつ,その権限と責任において最終決定すべきである。

◯ 一部には,大学の学部や学部教授会が,経営に関する事項についても事実上の決定権や拒否権を有しているとの指摘もあるが,権限と責任の所在の一致という観点からすれば,経営に最終的な責任を負わない組織が経営事項について決定することは,理事会からの権限の委任がない限り,適切とは言えない。

◯ 一方,理事会が教育研究に関する事項について,教学組織の意向を十分に尊重することも必要である。特に,学生の入学や卒業の審査,学位授与の審査,教員の研究業績等の審査等,高い専門性とともに公平性・透明性も求められる事項については,原則として教学組織の意見を尊重することが求められる。

◯ なお,経営事項と教学事項を調整するための仕組みとして,法律上は,大学の学長が学校法人の理事として経営に参画する制度が設けられているが,大学における実例を見ても,学長だけでなく,副学長や学部長を理事とするなど教学面にも配慮した理事会の構成としたり,理事会と大学執行部が定期的に意見交換を行う場を持ち,双方の意思疎通を図ったりしている事例など,様々な取組が行われており,参考となろう。

私の経験上、教学部門と事務部門がお互いを尊重しながら役割分担かつ連携できている私学はごくまれです。

そして、その問題点をしくみだけで解消できるケースはそう多くない、とも感じています。

とすれば、このレポートにあるように、一方でしくみを整えつつ、同時に、他の立場の意見を尊重したり、意見交換を積極的に行ったりする、その意識と行動が重要なのではないでしょうか。


経営の重要な一要素である組織運営。

組織全体の力を最大限発揮するためにも、円滑な組織運営が望まれます。


(文責:吉田)