先週末の金曜日、今年最後の学校経営セミナーを開催させていただきました。
テーマは「人事考課の事例研究」。
世の中では実際にどのくらいの人事考課制度が導入されているのか、
導入されている制度にはどのようなものがあるのか、
といったことをご紹介しながら、望ましい人事考課制度について考えてみました。
セミナーでご紹介したのですが、今回いろいろな統計を調査した結果、
「公立校では100%、人事考課制度が導入されている」
ということが分かりました。
しかも、そのうちのほぼすべてが、全教職員を対象にした人事考課制度です。
私学に関する統計値は明らかになっていませんが、少なくとも公立校とはかなり異なる状況であることは間違いないでしょう。
その一方で、公立校の人事考課制度の運用がうまくいっている、とは思えません。
なぜなら、
・考課者訓練がなされていない、あるいは頻度が少ない
・目標設定面談や考課結果のフィードバック面談がなされていない
・考課結果が開示されていない
・考課基準すら開示されていない
といった事例が少なからず見受けられたからです。
いくら良い評価制度であっても、このようなことが起きては制度は絶対にうまくいかない―私は確信を持ってそう言えます。
人事考課制度は、どうしてもその「制度設計」に気を遣いがちです。
それはもちろん、とても大切なことです。
が、それ以上に大切なのが「運用のしくみ」「運用の意識」です。
制度が出来上がったら途端に制度への意識が低下する…起きがちなことと言えばそうですが、人事考課制度にあっては絶対にそれは禁物です。
評価者の評価スキルは確かなのか。
どんな行動や意識、成果が評価されるのか、またその評価結果はどうだったのかを評価される側が知る機会を持てるのか。
評価する側とされる側の意見交換の機会は確保されているのか…
そういった運用のしくみを確立して初めて、人事考課制度は機能します。
そして特に評価する側は常に評価対象の教職員さんのことを気にかけ、観察し、コミュニケーションをとる。
そんな意識がなくては正しい評価はなし得ません。
「頑張った人に報いてあげたい」という経営者あるいは経営陣の気持ちは理解できます。
が、それが「評価によって差をつける」ことを意味するのであれば、忘れてならないのは「低い評価を受けたメンバーの理解・納得」です。これは教育者たるもの、学校現場の先生方が一番よく知るところでしょう。
人事考課制度は、しっかり運用することで人材育成に関して大きな効果を発揮します。
が、一方で人事考課制度は、導入よりも運用の方がよほど骨が折れます。
制度をすでに導入されている、あるいは今後導入される学校さんにおかれては、そのことを絶対に忘れないでいただきたいと思います。
(文責:吉田)