今日は表題に「退職金制度」と書いておきながら、まずは年金のニュースを採り上げます。
「確定拠出年金」とは、運用の成績に応じて受け取る額が変わる年金のこと。日本版401kと呼ばれています。
この制度は税制上の優遇があり(企業や個人が出す毎月の掛金には税金がかかりません)、この非課税枠が掛金の限度額となっています。この上限額を引き上げる案について現在検討されているというニュースです。
なぜ政府が確定拠出年金を推進しているかと言えば、従来の年金制度=確定給付年金はその名の通り、給付額を確定させているため
掛金の運用責任が政府にある
のに対し、確定拠出年金では
掛金の運用責任は個人にある
からと言ってよいでしょう(少々荒っぽい定義になってしまうことをご容赦下さい)。
例えば国民サイドで考えた場合、国民年金加入者は毎月一定の掛金を支出し続けることで、受給開始年齢到達時に確約された年金を受け取ることができます。
が確定拠出年金の場合には、いくらの掛金を支出したとしても、そのリターンがいくらになるのかは受給を始めてみないと分かりません。これが確定拠出年金制度の変動リスクです。そしてこの変動リスクの中でも受給額がマイナスに振れる事態を軽減するために、おそらく税負担の優遇制度が設けられているのでしょう。
受け取る側からすると、確定額をもらえるほうが安心、ということが言えますが、そうではない制度が現われるのには理由があります。それが国家財政の問題。年金の負担は国にとって非常に重くのしかかっていますから、せめて将来に支給予定の債務をなるべく確定させたいというのが本音でしょう。
翻って私学財政。
これまでお話を伺った学校の多くで、私は退職金にまつわる各私学のご苦労を耳にしました。
その理由の多くは「外部積立よりも多くの額を支払わねばならない現実」。
各校の退職金規定は成立からすでにある程度の年数を経ているものが多く、右肩上がりの生徒数を前提とした制度が時代に合わなくなっているケースもたくさんあるようです。
私学の退職金制度は退職金財団といった外部積立先に掛金を積んで、教職員さんの退職時にはそれを取り崩して支給する、という形態が一般的だと思われます。
そう、これがまさに先ほどの確定拠出年金でいうところの定額掛金、というわけです。
ところが、支給時点ではこの金額では賄い切れず、学内に留保されている資金も追加支出せねばならない。これはつまり「確定給付年金」と同じ状態になっている、ということです。
受け取る側からすればもちろん、外部積立以上の金額を受け取れるほうが嬉しい。
けれど私学財政はそれを許容できるほどの余裕がない…
そんな事態に苦しむ私学が多くなっているのではないでしょうか。
既得権の問題もあり、退職金制度の変更には制度構築そのものにも時間がかかり、また変更の効果が表れるまでにもより多くの時間がかかります。
変更が必要だとお感じの学校さんは、早めの着手をお勧めいたします。
(文責:吉田)