寝ても覚めても学校のこと。~学校経営の経営課題(人事・財務・募集・施設などなど)について考えるブログ~

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地方の私立中、広がる「出張入試」 生徒集めに首都圏へ

 首都圏に入試会場を設けて「出張入試」を行う地方の私立中学校が増えている。少子化で生徒集めが難しくなり、地方より中学受験への関心が高い首都圏に活路を求めている。首都圏の中学が入試を始める前の「試し受験」として定着しつつある。

 「西の果ての小さな学校ですが、関心を持って頂ければありがたい」

 今月2日、長崎日大長崎県)が東京都内で開いた学校説明会で、集まった約20人の保護者らに池内一郎教頭が呼びかけた。募集定員は80人。約1時間、寮の設備や英語重視の教育方針などを説明した。

 同校の首都圏での入試は2006年に始まった。初年度の受験生は400人ほどだったが、今年1月は約2千人が受けた。池内教頭は「回を重ねて知名度が上がり、日本大学の系列校という点も関心をもってもらえたのでは」とみる。

 来年1月にこうした出張入試をする地方の私立中は、大手進学塾などが把握する限りで16校ある。このうち5校が09年以降に始めたほか、2校が来年1月に初めて実施する。

 その一つ、盛岡白百合学園岩手県)の担当者は「少子化で、地元だけでは生徒集めが難しくなった」。近年は定員割れした年もあるといい、「中学受験が珍しくない首都圏からの生徒に来てほしい」と期待する。

 ただ、小学校を出たばかりで、実際に親元を離れて入学する生徒は多くはない。今年1月に出張入試を実施した14校のうち、首都圏からの入学者数が2ケタに乗ったのは、函館ラ・サール(北海道)など数校。他は「数人」が大半で、ゼロの学校もある。入学者が1人だった西大和学園奈良県)の担当者は「子どもを中学から寮に入れる親は多くはない」と話す。

 それでも、受験生側、中学側双方にメリットがある。

 今年1月の出張入試の受験者数は、14校で延べ約9千人に上った。募集定員180人に対し、東京会場だけで約2500人が受けた学校も。出張入試は大半が1月上旬にあるため、同月中旬にスタートする首都圏の中学入試に向けた予行演習として受験を勧める学習塾が多いという。

 受験料は首都圏の私立中よりやや安い1万5千~2万円が相場だが、ある地方私立中の担当者は「500人集まれば収支はトントン。『試し受験』でもありがたい」。大手塾の関係者は「出張入試が増えた一因は、試し受験で得られる受験料収入にある」とみる。

 大手進学塾・栄光ゼミナール広報室の山中亨課長は「地方の私立中にとって、出張入試は『首都圏で入試ができる力量がある』と地元でPRできる材料にもなる。学校のブランド作りの狙いもある」と分析する。

 東京私立中学高校協会の近藤彰郎会長はこうした動きに対し「問題あり」という立場だ。「もし東京の有名私立中が地方で入試をしたとすれば、多くの受験生を集めるだろう。しかし、他の地域にまで手を広げる生徒の獲得競争が過熱すれば、私学経営は立ちゆかなくなる。教育内容で競うべきだ」(岡雄一郎)

受験料収入、ブランド作り…教育の中身とはすこし開きがあるこれらの意図で都心での入試機会を伺う地方の私学。それだけ経営が厳しくなっているということでもあるでしょう。そして、ニーズに合わせた商売、というのがひとつのキーワードである一般の事業の「心得」が学校にも広まってきているとも言えるのでしょうか。その考え方はそれなりに意味があるのでしょうが、さてそこに「教育のプロ」としての気概は…よりいっそう、学校としての理念の重要性が高まっているように思います。(JTC/吉田俊也)