寝ても覚めても学校のこと。~学校経営の経営課題(人事・財務・募集・施設などなど)について考えるブログ~

大阪の学校経営コンサル会社/株式会社ワイズコンサルティングが、学校経営に関する情報を収集し発信するブログです。

遠隔教育の推進

某通信大手のコマーシャルで以前、遠隔教育のツールが紹介されていました。

 

大きなスクリーンに映し出される、別の学校の教室にいる生徒たち。

まるで目の前にその子たちがいるような状態で、合体授業が進んでいく…

 

そんな日も目の前に迫っているのだろうな、と思っていたのですが、

文科省からこんな情報提供がなされました。

 

 遠隔教育の推進に向けた施策方針

 

「遠隔教育の推進に向けたタスクフォース」が文科省内に組まれており、

そこからの情報発信となっています。

 

詳細はリンク先の資料をお読みいただきたいのですが、

ここでは遠隔教育を推進する目的について、

「はじめに」の一節を引用したいと思います。

 

学校教育において遠隔システムを効果的に活用した教育活動を一層取り入れていくことにより、児童生徒が多様な意見に触れ、様々な体験を積む機会を増やすなど、教育の質の更なる向上につなげることが可能となる。ICTの強みの一つとして、距離に関わりなく相互に情報の発信・受信のやりとりができる(双方向性を有する)ことがあげられ、遠隔教育2はこの強みを生かすものとして、継続して推進すべきである。

さらに、不登校児童生徒や、疾病による療養のため又は障害のため、相当の期間学校を欠席すると認められる児童生徒(以下「病気療養児」という。)など、様々な事情により通学して教育を受けることが困難な児童生徒に対し、一人一人の学習ニーズにきめ細かく対応する観点から、ICT を効果的に活用し、教育の機会均等や質の維持・向上につなげることも可能である。

 

本報告書においては、遠隔教育を3つに類型化しており、それぞれ

(1)合同授業型

(2)教師支援型

(3)教科・科目充実型

とされていますが、いずれにおいても、遠隔教育の実現により

教育効果が高まることが期待されています。

 

少子化や育ちの多様化により、学校教育としての規模を維持できなかったり、

あるいは何らかの事情で毎日の登校が難しかったりする場合に、

遠隔教育を可能にする環境整備は大いに有用であると感じます。

 

本来の使用形態ではないかもしれませんが、

例えば近時事前災害の発生で臨時休校せざるを得ないような場合に、

出勤できる教員のみで授業を提供し、

子どもたちは自宅で学習するといったことにも活用できるかもしれません。

 

また、私学においては出席日数要件の厳格運用により、

不登校の子どもたちがやむなく転退学を迫られる事態になる前に、

このシステムを稼働させて自宅学習を出席日数に加えたりできれば…

といったことも考えられなくはないでしょう。

 

人口減少と偏在が進む中で、遠隔教育の必要性は高まっているように感じます。

柔軟な制度運用がなされることを願っております。

 

(文責:吉田)

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総合教育政策局の設置について

文部科学省から、こんなお知らせがなされています。

 

文部科学省の組織再編(平成30年9月時点):文部科学省

 

総合教育政策局の設置について(案)

平成30年10月、文部科学省は新時代の教育政策実現に向けた大きな組織再編を行います。
 
人生100年時代、超スマート社会(Society5.0)、グローバル化や人口減少など社会構造は急速に変化しており、教育を取り巻く環境も大きく変化していくと考えられます。
こうした変化に対応し、これをリードし、更に新しい価値を創造することのできる人間を育成していくためには、教育政策やその推進のための行政組織も不断に進化していかなければなりません。

このことを踏まえ、教育分野の筆頭局として総合教育政策局を設置し、

(1)教育基本法に定める生涯学習の理念の実現に向け、

1.教育振興基本計画の策定など総合的な教育政策を企画立案し推進するとともに、
2.総合的かつ客観的な根拠に基づく政策を推進するための基盤整備を行います。

(2)人材育成、環境整備、事業支援といった視点から、生涯にわたる学び、地域における学び、「ともに生きる学び」を推進します。

なお、生涯学習政策局は、これまでも教育分野の筆頭局として生涯学習社会の実現の推進を図ってきたところですが、今回の組織再編は、時代の大きな変化も踏まえてより一層強固に取組を推進していくために、体制の見直しを図るものです。
現在、総合教育政策局の設置のための文部科学省組織令の改正作業を進めているところであり、組織の名称や各部署の所掌については、同令の改正をもって正式に決定することになります。

リカレント教育を含め、教育機関が担う教育というサービスを提供する対象が

広がりつつあります。 

それを示すひとつの現象?が、この文科省の組織再編ではないでしょうか。

 

 

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私学においては、少子化の影響で

学校規模の縮小を迫られるケースも少なからずあるでしょう。

その際、生涯学習の担い手としての役割を果たすことはできないか、

一度ご高察いただくことも必要かもしれません。

なにせ学校には既存の施設と人材がありますから、

より幅の広い教育活動が実現できる要素が整っている可能性があります。

 

(文責:吉田)

 

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セミナーをふりかえって

先週金曜日、大阪・梅田にて弊社主催セミナーを実施いたしました。

テーマは「総額人件費管理法」。

人件費管理を大きな課題として捉えておられる方が多いこともあってか、

定員いっぱいのお申込みをいただきました。

 

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(恒例、名刺交換の時間です)

 

セミナールームのキャパシティが十分でなく、

窮屈な中での3時間となった点がまず大きな反省です。

 

一方で、今回はディスカッションを多く取り入れ、

各校の実情やご参加者各位の想いを共有していただくことに重きを置きました。

5回のディスカッションは大いに盛り上がり、

制限時間を越えて(!)、積極的に情報交換していただくことができました。

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セミナー当日の風景です)

 

人件費には「単価」と「人数」の2つの要素がありますが、

それぞれについての管理手法について具体的にみていきました。

学校には馴染まないと思われがちな方法を含め、

ゼロベースでお考えいただくことが重要ではないか、

という投げかけもさせていただきました。

 

やはりディスカッションの印象が強かったのでしょうか、

アンケートには他校のことをいろいろ聞けたのが良かった、

というご意見をかなりたくさんいただくことができました。

弊社のセミナーはそこが強み!です。

今後に向けても、今回のご参加者様同士の人脈が生きれば…

と願っています。

 

次回は10月5日(金)開催予定。

あっという間ですね。

テーマは「PDCA」「学校評価」「事業計画」。

これからの私学経営のキーワードになりそうなことを

盛りだくさんで取り扱う予定です。

 

今回のセミナーでは事前にいくつかご質問をいただきましたので、

その質問への回答も含めてセミナーを構成させていただきました。

次回以降もそのようにできれば…と思っておりますので、

皆様からのご質問もお待ちしております。

 

(文責:吉田)

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確定拠出年金、納付を延長 厚労省検討

まずは本日、学校経営セミナー開催日となっております。

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おかげさまで今回はほぼ満席のお申込をいただいております。

天候は若干ぐずついていますが、行き帰りの時間帯には

雨は落ちない予報となっています。

場所は東梅田、お初天神隣のビルです。

地下とアーケードを使えば、梅田駅から雨でも傘要らず。

皆様、お気をつけてお越しください。

 

 

さて本日は年金の話題です。

日本経済新聞より。

www.nikkei.com

(有料会員限定記事です。ご了承ください)

 

厚生労働省は運用成果によって年金額が変わる確定拠出年金について、掛け金を払い込める期間を延ばす方向で検討に入る。上限を60歳から65歳に上げる案が軸だ。期間が延びれば、老後に受け取る年金は増える。60歳を超えても働く人が増えているため私的年金の仕組みを充実させ、先細りする公的年金を補う。

国は支出抑制に躍起になっています。

私学においても経常費補助金の行方が気になりますが、

それ以上に財政規模のはるかに大きい年金について、

いわゆる「自己責任化」を促進したい考えのようです。

 

確定拠出年金は、掛金を支払った時点では

受け取れる額が確定しないのが大きな特徴です。

つまり、個人が支払った掛金額が、その後の運用成果によって

増減するしくみです。まさに投資、資産運用という概念にあてはまりますね。

 

今回の拠出上限年齢の引き上げは、

60歳以上で働く人が増えているのを一つの根拠にしているようです。

まあ、これも国策による誘導が大きいのかもしれませんが…

 

さて私学においても60歳以上の雇用、

そして生活保障ということが今後は大きなテーマになりそうです。

これまでは大企業並みの退職金支給が可能であった私学も、

今後はそうもいかないかもしれません。

この機会に中長期の資金繰りについて考えてみてはいかがでしょうか。

 

(文責:吉田)

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70歳雇用 努力目標に

人生の諸先輩方がとっても元気だなあ、と感じることが多くあります。

だから、というわけではないでしょうが、こんな記事が出ていました。

日本経済新聞より。

 

www.nikkei.com

(有料会員限定記事です。ご了承ください)

 

政府は高齢者が希望すれば原則70歳まで働けるよう環境整備を始める。現在は原則65歳まで働けるよう企業に義務付けており、年齢引き上げの検討に入る。2019年度から高齢者の採用に積極的な企業を支援する。その上で来年以降に高年齢者雇用安定法の改正も視野に70歳まで働けるようにする。少子高齢化や人口減少社会を見据え、多様な働き方を後押しするのが狙い。

 

 

人材難の中、私学においても高齢者雇用について

いろいろと考えておられることと思います。

多くのノウハウを持ったベテランの継続雇用は

学校運営にとっては貴重な経営資源となり得ます。

 

一方で、しっかり考えておくべきは人件費コントロールです。

再雇用という手法を用いないとすれば、

いよいよ「右肩上がりの年齢給」の限界を感じます。

賃金制度全体の改編とともに、人事施策を検討したいですね。

 

(文責:吉田)

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通学の荷物「軽くして」

昨日の朝刊に、こんな記事が新聞に載りました。

日経新聞より。

 

www.nikkei.com

 

わりあい早い時期から話題になっていた、子どもたちの荷物の多さ。

文科省がこんな通知を発しました。

 

児童生徒の携行品に係る配慮について:文部科学省

 

この通知の中で、「児童生徒の携行品に係る工夫例」として、

以下のような内容が掲載されています。

一部抜粋いたします。

【日常的な教材や学習用具等について】

○ 宿題で使用する教材等を明示することにより、家庭学習で使用する予定のない教材等について、児童生徒の机の中などに置いて帰ることを認めている。
○ 同じ日の授業で多くの学習用具を用いる場合には、予め数日に分けて持ってくるよう指導するなど、児童生徒に教材等を使用する見通しを明らかにして、携行品の分量が特定の日に偏らないようにしている。
○ 部活動の用具のうち、個人が所有するものについて、鍵のかかる部室やロッカーであれば、置いて帰ることを認めている。

【学期始め、学期末等における教材や学習用具等について】

○ 学期末に持ち帰る学習用具の中で大きいもの(水彩道具、習字道具、鍵盤ハーモニカ、裁縫道具等)については、1日1つになるよう計画的に持ち帰るとともに、給食エプロンや体操服、上靴などを持ち帰る金曜日に重ならないよう指導している。

【その他留意している点について】

○ 児童生徒の持ち物について、盗難防止等の観点から、放課後は施錠するようにしている。
○ 教材等について、置いて帰ってもよいものについては、年度当初にリストを配布して児童生徒に周知している。
○ 日頃から学校に置いていくことを認めているものや学期末に持ち帰るものについて、学年通信等の文書で保護者に連絡し、周知している。 

個人的には、最後の【その他留意している点について】の工夫は

しくみづくりにおいて重要性が高いように感じました。

 

ちなみに…

かなり古い記事なのですが、

この朝日新聞の記事には映像が埋め込まれていて、

思わず見入ってしまいました。

 

www.asahi.com

 

さて登下校の安全は私学にとっても大きなテーマです。

御校ではどのような指導をされていますか?

一度、生徒さんの荷物を持ってみてもいいかもしれませんね。

 

(文責:吉田)

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学校法人運営調査とは?その2

先日に続いて、学校法人運営調査についてお届けいたします。

基となっている情報は文科省HPに掲載されています。

 

学校法人運営調査における経営指導の充実について(通知):文部科学省

 

では今後、学校法人運営調査によって、

どのような指導がなされることになるのでしょうか。

HPから抜粋してみます。

(赤文字は筆者による加工です)

3.学校法人に対するきめ細かい集中的な指導の実施

(1)学校法人運営調査委員会において,財務の悪化状況,経営指導強化指標への該当状況,今後の経営改善に向けた取組の状況等を総合的に勘案した上で,経営基盤の安定確保が必要と判断された学校法人,すなわち経営指導の対象となる学校法人のうち,経営指導強化指標に該当した学校法人及び経営指導強化指標に該当していなくても,個別の状況を勘案し,経営指導強化指標に該当した学校法人と同様の指導が必要と判断される学校法人については,3年程度を目安に経営改善の実績を上げるよう,きめ細かい集中的な指導を行うこと。
 なお,きめ細かい集中的な指導の実施期間として目安となる3年程度の間に,学校法人運営調査委員会において,下記4.(1)①から③の状況が確認された場合には,その時点で下記4.の対応を行う予定であること。

(2)きめ細かい集中的な指導の過程で,学校法人自らの経営努力等により経営指導強化指標に該当しなくなる等一定の経営改善が図られた場合には,学校法人運営調査委員会においてその状況を確認の上,きめ細かい集中的な指導の対象からは除き,財務状況等について必要なフォローアップを行うこと等,当該学校法人に対する指導の扱いを変更すること。

かなりの圧を感じるのは私だけでしょうか… 

厳しい態度で臨む、という姿勢が伺えます。

 

具体的な対応については以下の通りです。

4.きめ細かい集中的な指導が行われた学校法人のうち,一定の状況が確認される学校法人への対応について

(1) 上記3.(1)のきめ細かい集中的な指導が行われた学校法人について,学校法人運営調査委員会において,以下①から③の状況が確認された場合には,「学校法人運営調査委員による調査結果」(通知)において,経営判断を促す内容を含む予定であること。
 ①経営改善の実績が上がらなかった。
 ②支払不能すなわち資金ショート又は債務超過に陥るリスクがある。
 ③学校法人の有する資産が,経営難の原因となっている組織廃止に必要となる額を下回るリスクがある。

(2) 上記4.(1)の通知には,以下の内容を盛り込む予定であること。
 ①経営改善の実績が上がっておらず,支払不能すなわち資金ショート,債務超過,組織廃止に必要な資産不足に陥るリスクがあること。
 ②必要と考えられる見直し内容を示して,経営上の判断をすること(部局の募集停止,設置校の廃止,学校法人解散等を含む)。
 ③上記①及び②を踏まえ,学校法人はその対応方策の方向性について,財務諸表や事業報告書等に明記すること。
 ④学校法人が上記③により公開した内容を文部科学省において公表する予定であること。

まさに「退場」勧告ですね。

指摘を受けてからの猶予期間は3年。

果たして3年という時間で解決する課題なのでしょうか。

 

私学は経営においても自主性を尊重されるべき存在です。

その自主性が失われるような事態に陥ったのは、他でもない、

私学自身の経営に対する意識の希薄さに端を発している、とも言えるでしょう。

しかしながら、この期に及んでこのような指導を受け、

経営の自主判断を奪われるような事態になってはいけません。

厳しい目で、自校園の経営について振り返ってみていただきたいと思います。

そして、必要な改善・改革を、公権力を行使されるのではなく、

自らの力で実現していただきたいと思います。

 

 

(文責:吉田)

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